芝居で伝える沖縄戦、その思いは…【島ネタCHOSA班】


芝居で伝える沖縄戦、その思いは…【島ネタCHOSA班】 6月2日の公演の出演者の皆さん。11人のキャストから回によって6人が出演。各回の配役は主催者SNSで発表
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6月23日は、沖縄県民にとって大切な慰霊の日。今回の島ネタCHOSA班では、沖縄戦をテーマにした芝居公演「鉄の暴風」を取り上げます。

「鉄の暴風」とは、沖縄を襲った激しい空襲や艦砲射撃の様子をたとえた言葉。その言葉をタイトルにした芝居公演「鉄の暴風」。読谷村「体験王国むら咲むら」内のククル奏劇場で、土日に1日2公演が開催中です。

物語の舞台は読谷村。現代の高校生・裕樹は、修学旅行先の沖縄で、沖縄戦が始まる直前にタイムスリップ。女学生のハルに助けられ、ハルの母親、近くに住む兄弟と家族のような温かい絆を結びますが、やがて米軍の艦砲射撃が始まり、裕樹らはチビチリガマへ避難。そこで痛ましい出来事が…というストーリー。

舞台の前半では、なごやかな日常風景のシーンも

戦争に向き合う

公演の企画・運営・制作を手掛けるのは、イベント企画OZ(オズ)代表の鈴木浩介さん。

「僕は沖縄出身ですが、親の転勤で学生の時に県外へ。沖縄にいずれ戻りたいという思いと、沖縄のために何かしたいという思いが重なって、芝居で戦争を伝えていくことができれば、と思ったのが最初のきっかけですね」

コロナ禍中の2020年に公演を企画。市役所などを回って提案を行う中で、むら咲むら内の劇場を紹介され、コロナ禍が明けた昨年の5月~7月に第1回、今年の5月から第2回を開始。そのほか、不定期で国頭村内の小学校、東京公演も実施。

登場人物は6人で、配役は11人のキャストから日替わりで決められます。キャストにはプロの役者もいれば、社会人も。調査員が観劇した回では、ガレッジセールの川田広樹さんも舞台に立っていました。

「鈴木さんからオファーがあって参加しました。今までは目を背けていたんですが、大人になってあらためて沖縄の歴史を知りたくて」と川田さん。「劇の内容は、実際にチビチリガマで起こったことなので、演じていてへこみますね。でも終わった時にご年配の方が『ありがとう』と言ってくださるんですよ」

演出と役者を兼任するごとーあきらさんは、名古屋出身。「この3カ月間、沖縄に住んで、現地の方のお話を聞いたり、戦跡を巡ったりしました。実際に見ないと表現できないので」と真剣な思いを話します。

後半の舞台はチビチリガマでの悲劇を描きます

出演者の思い

他の出演者も、それぞれの胸中を語ります。

「今の平和な生活が当たり前のように思えるけど、当たり前じゃないんだよ、ということを少しでも受け取ってもらえたら」(山内千草さん)

「芝居がきっかけでチビチリガマにも行き、犠牲者のお名前や年齢を見たら、一人一人の顔が浮かんできました」(大城しゅりさん)

「ひいおじいちゃんが戦争中、こういう中で過ごしたんだな、と」(福原兼寿さん)

「演じてみて初めて、戦争を体験したおじいやおばあの気持ちが分かり、新聞の体験者の記事も読むようになりました」(眞榮城玄弥さん)

「この芝居には、すごく苦しいことだけじゃなく、家族の温かさやちょっとしたお笑いもあります。若い人にもぜひ見てほしいですね」(高良知帆さん)

今回の公演は7月7日まで。読者の皆さんも、ぜひ足を運んでみてください。


鉄の暴風

場所=体験王国むら咲むらククル奏劇場
曜日・時間=7月7日までの土曜・日曜、11:00・14:00の1日2回公演
料金=大人1800円、中高生1500円、
小学生1200円、小学生未満無料。
※別途、むら咲むら入場料がかかります

X(Twitter):https://x.com/okinawakoen

(2024年6月20日 週刊レキオ掲載)