ICTで工事自動化 神谷産業が「情報化施工」


この記事を書いた人 新里 哲
情報化施工に対応した建設機械を前にする神谷産業の神谷善高社長=南城市

 建設業界で人材不足感が広がる中、神谷産業(那覇市、神谷善高社長)が県内で初めて情報通信技術(ICT)を活用したブルドーザーなどの建設用機械を導入し、工事を一部自動化する「情報化施工」に取り組み、注目を集めている。対応機械の導入費用はかさむが、施工日数が最大で従来の3分の1程度に収まるなど効率化につながっている。国も土木工事の情報化を推進しており、ICTと建設業の融合は土木工事に生産性向上をもたらしそうだ。

 情報化施工では、建設機械に複数の国が運営する衛星測位システム(GNSS)の電波を受信し、現在地を高精度に測位できるアンテナとコンピューターを設置する。

 コンピューターにはあらかじめ電子化された現場の3次元地図と設計情報が登録され、建設工事の調査、設計、施工、検査に関わる情報を一元管理する。位置情報を踏まえて計算し、重機のブレードの油圧を自動制御することで運転士の操作を簡略化できる。工事に着手する前に、構造物の正確な位置を出す丁張りの資材設置作業も大幅に減る。土を削る量やブレード角度も設計情報に合わせて自動で調整されるため、施工精度の向上や効率化につながる。

 地面を固める転圧機でも転圧した位置や回数を機械が自動で記録するため、施工管理の手間も減らせる。

 神谷産業では2013年、ブルドーザーと転圧機でICT対応機材を導入した。初期投資は従来の2・5倍になったが、施工日数は「運転士が作業するのに比べ3分の1に圧縮された」と神谷社長。機械の走行や安全確認は人が担うため運転士は必要だが、施工日数の減少により燃料代や人件費が圧縮され、20~30%のコスト削減につながり「ランニングコストを含めれば断然合う」と神谷社長は強調した。同社は現在、情報化施工に対応したブルドーザーとパワーショベル2台を発注しており、情報化施工を加速させる構えだ。

 神谷社長によると、同社では建設機材の運転士のほとんどを50代以上が占め「将来人がいなくなる危機感があった」。建設業が先端技術を導入することで「(建設業を敬遠する)若い人たちも業界に目を向けてくれるのではないか」と期待した。

 国も土木工事の情報化に本格的に乗り出す。沖縄総合事務局は本年度から、土を取り扱う量が2千立方メートルを超える事業について、測量を含めた情報化施工を義務付けた。開発建設部の金城博技術企画官は「建設工事に携わる人材が減る中、情報化を積極的に進めたい」と話した。