衰え懸念に共感 意向尊重望む声 陛下お気持ち表明


社会
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 天皇陛下が8日、生前退位の意向をにじませる「お気持ち」を表明した。放送を通じ、約11分間のビデオメッセージに接した沖縄県内の関係者からは、意向を尊重して皇室典範を改定すべきだとの意見があった。一方で沖縄戦体験者からは、改憲論議など政治的な動きに利用されることを不安視する声も上がった。

 天皇陛下が放送を通じてお言葉を発した8日、県民からは「(生前退位の)意向を尊重してほしい」「高齢なので、ゆっくり休んでほしい」などの意見があった。生前退位には皇室典範の改定が必要となるが、7月の参院選では憲法改正が争点となった。沖縄戦体験者は「改憲と一緒くたに論じることがあってはならない」と安倍政権にくぎを刺した。

 天皇皇后両陛下は2014年の来県で対馬丸記念館を訪れ、生存者や遺族ら15人と対面した。対馬丸記念会の高良政勝理事長(76)は「沖縄や東日本大震災の被災地などを何度も訪れており、激務だと思う。国民のためにも(生前退位を)決意したのだろう」と語る。皇室典範に関しては「陛下は戦争は絶対に駄目だと行動で示してきた。この流れに紛れて改憲を論じれば、陛下の意向にも反する」と指摘した。

 白梅同窓会の中山きく会長(87)は4年前の来県時、両陛下と対面した。「陛下から『ご苦労をされましたね』と声を掛けていただいた。今後は皇太子さまに任せ、ゆっくりしてほしい」と語る。皇室典範には「長い歴史があるが(改定を)考える必要がある。ただ改憲論議とは分けるべきだ。憲法9条は私たちの宝物だ」と強調した。

 県遺族連合会の宮城篤正会長は「沖縄戦没者墓苑では、沖縄戦の体験者一人一人に丁寧に『苦労しましたね』とか『お体を大事に』などと言葉を掛けていた。戦後の沖縄の状況を見て責任を感じていたのだと思う。天皇の立場で足を運んできたことは、体験者にとっても大事な意味を持っていた」と慰霊の旅の意義を強調。「まじめで一生懸命な方なので無理をしてしまう。難しい問題もあるが個人的には(生前退位を)認めてあげたい」と語った。

 沖縄からの豆記者団は毎回、皇太子との面談を重ねてきた。川満茂雄豆記者交歓会会長は「お気持ちに沿った形で、法整備を含めて対応した方がいいのではないか」と述べた。1963年、最初に派遣された豆記者が東宮御所で皇太子時代の陛下と面談。川満さんは「その時のご記憶を大切にしていただいているようだ。仮に継がれることになっても平和に対する思い、沖縄への深い思いもまた受け継いでいただきたい」と求めた。