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「自分が犯してしまった罪の重大さを分かってほしい」。30秒近くの長い沈黙の後に絞り出した少女の痛切な一言が、事件の深刻さをあからさまにした。
2023年12月に発生した米兵少女誘拐暴行事件で、わいせつ誘拐、不同意性交の罪に問われた米空軍兵長の被告(25)の第2回公判が8月23日、那覇地裁(佐藤哲郎裁判長)で開かれた。検察側証人として出廷した被害者の少女は7時間30分にわたる尋問でつらい記憶と向き合うことを強いられた。専門家らからビデオリンク方式ではなく、遮蔽(しゃへい)措置のみで実施することへの疑問も上がった23日の公判で、少女は何を語ったのか。法廷でのやり取りを詳報する。
◆「クリスマスイブ」に起きたこと
「宣誓、良心に従って真実を述べ、偽りを述べないことを誓います」
午前10時、那覇地裁2階の204号法廷。
遮蔽板の内側で、裁判官に促され、証人尋問に先立つ宣誓書を読み上げた少女の声は驚くほど落ち着いていた。
傍聴希望者が殺到し、傍聴券の抽選倍率が8・25倍に達した7月12日の第1回公判に続き、この日も地裁には多くの報道陣、市民らが集まった。
法廷外では、地裁側が敷地内に複数の職員を配置し、傍聴者を対象にした手荷物検査も実施し、不測の事態に備えた。満員の傍聴席から視線が注がれる法廷の空気は、取材する記者も息苦しく感じるほどに張り詰めていた。
起訴状などによると、少女が被害に遭ったのは、2023年12月24日、世間を華やいだ雰囲気が包む「クリスマスイブ」の夕方のことだったとされる。
公判では、少女を「Aさん」、被告を「犯人」とそれぞれ呼ぶこととされ、証人尋問は、事件が起きるまでの流れを追うように始まった。
◆日本語・英語と両手の指の「ジェスチャー」で伝えた年齢
検察側による主尋問でのやり取りによれば、少女が「犯人」と最初に接触したのは沖縄本島内の公園だった。
少女にとっては、週2、3度ほど訪れ、「散歩したりした」というなじみの地元の公園。その日、家族とささいなことで「ケンカをした」少女は、「学校指定のジャージ」と「ビーチサンダル」という軽装でその場所に向かった。時刻は「(午後)4時か5時のどちらかだった」(少女)という。
公園のベンチに腰掛け、「スマートフォンで写真などを見ていた」という少女。その背後から話しかけてきた「知らない外国人男性」が「犯人」の被告だった。最初のやり取りは次のようなものだったという。
検察官 「『犯人』から声を掛けられた時はどのように」
少女 「『あの』と日本語で話しかけてきました」
検察官 「それに対して?」
少女 「『はい』と答えました」
少女の証言によれば、「犯人」とされる被告はジャージ姿の少女に声を掛け、すぐに年齢を確認した。少女は自身の実年齢を「日本語だけでなく、英語でも」伝え、さらに両手の指による「ジェスチャー」でも16歳未満であることを示した。
すると「犯人」は、「自分の指を折り曲げて、『1、2、3、4』と日本語で数え始めた」(少女)という。
この点について検察官は「自分の指を折り曲げながら」と再度確認し、少女は「はい」と応じた。その後、「犯人」は「自分は19歳だ」と少女に自身の年齢を偽ったという。
少女は、検察官から「正直に自分の年齢を答えた理由は」と問われ、「うそをつく理由がなかった」とはっきりと答えている。
検察官が、「犯人」の被告と少女との年齢のやり取りについて詳細に質問した背景には、「無罪」を主張する被告が少女の年齢を「18歳」と誤信したと主張している点があるとみられる。
実年齢をはっきりと伝えたことや、「犯人」が年齢を詐称していたことなどを明らかにすることで、性的行為の相手が16歳未満か、5歳以上年下の16歳未満の子どもであった場合、同意の有無を問わずに罰せられる「不同意性交罪」の立証につなげようとする検察側の狙いが透ける。
◆執拗に話しかける「犯人」 公園から車で
一方、法廷でのやり取りは、「犯人」が少女を公園から車で連れ去るまでのやり取りに移行していく。
少女の証言によると、「犯人」との会話は、「犯人」が持っていたスマートフォンの「翻訳アプリ」を使って行われたとされる。「犯人」から公園にいる理由を問われた少女は、「母とケンカしたことを伝えた」という。母親と散髪代を巡るいさかいがあったことを伝えた少女に対して、「犯人」は、「今週末、また会ってくれたら自分がそのお金を出す」などと持ち掛けたという。
「大丈夫」と断った少女に対して「犯人」はさらに次のように執拗に話しかけたという。
検察官 「『犯人』は何か言っていましたか」
少女 「何かを言っていましたが、私には理解できませんでした」
検察官 「言われている言葉が? 言葉は聞き取れたが中身が理解できない?」
少女 「文の中身が理解できませんでした」
検察官 「どんなことを」
少女 「『あなたはかわいいから幸せになる価値がある』と言っていました」
検察官 「文の意味、なぜそういう言葉が出てきたのか理解できなかった?」
少女 「はい」
その後、検察官とのやり取りの中で少女は自身が抱えるあるつらい記憶について打ち明ける。
検察官 「知らない男性から話しかけられることについて、話しかけられる以外に(相手が)男性であることに何か思うことは」
少女 「私は男の人が怖いです」
検察官 「どういう意味?」
少女 「男性恐怖症という意味です」