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故郷・宮城島に油絵寄贈 舞台美術家の新城さん 海とサバニ、半世紀前に描く 沖縄


故郷・宮城島に油絵寄贈 舞台美術家の新城さん 海とサバニ、半世紀前に描く 沖縄 油絵をぬちマースの高安正勝社長(左)に寄贈した新城栄徳さん(中央)と島袋清助さん=20日、うるま市与那城宮城のぬちまーす
この記事を書いた人 Avatar photo 石井 恭子

 【うるま】沖縄芝居の舞台美術の第一人者、新城栄徳さん(86)が半世紀前に描いた、うるま市の平安座島や宮城島、伊計島方面を臨む与那城照間の浜とサバニを描いた絵画がこのほど、同市与那城宮城のぬちまーす(高安正勝社長)に寄贈され、カフェレストランたかはなり内に展示された。サバニは新城さんが沖縄国際海洋博覧会よりも昔、那覇の安謝港で見て記憶にあったという「南洋ハギ」と思われ、照間の海浜風景と重ね合わせた。新城さんは展示を喜びつつ、「芝居の幕など沖縄の風景を想像で描いてきて、皆さんに喜んでもらえてやっていてよかったなと思う」と語った。

 作品は新城さんが1975年頃、海洋博の「海を描く現代絵画コンクール」のために描いた油絵だが、本人が「力不足」として出展しなかった。コンクールには係船柱(ボラード)を描いた別の作品で入選。弟の画家・征孝さんは優秀賞を受賞した。

 家に飾るにもサイズが大きく、新城さんと舞台美術の師弟関係にあった島袋清助さん(77)が経営する浦添市屋富祖の民謡居酒屋「花ぬ遊び」の店内にステージ画を描いた縁から、サバニ作品を店内に飾ることになった。それから30年ほどたったが、島袋さんも年齢的なことから絵画の行く末を気にかけ、宮城島出身の縁で、ぬちまーすへの寄贈が決まった。

 島袋さんは「生まれ島のここに飾ってもらえれば、何万人という人に来て見ていただくことができる。こういった『南洋ハギ』の絵も沖縄ではあんまりないのでは」と喜ぶ。

 サバニを簡略化した南洋ハギは太平洋戦争直前のサイパンで糸満海人らにより考案された。戦後の物資不足の中、県内でも重宝された。
額も新装し、カフェレストランの中央に飾られた歴史の詰まった堂々たる作品。高安社長(77)は「描いた思いが伝わるというか、世の中に知らさんといけないなと。大事にしていきたい。描いた絵が残っていくのはいいことで、こちらとしても感謝しています」と笑顔で語った。 

(石井恭子)