沖縄県は30日、約80年ぶりに古里へ戻った沖縄由来の流出文化財20点のうち18点を関係者や報道陣向けに公開した。会場となった県立博物館・美術館の一室で、ひときわ存在感を放ったのが、戦後初めて現物が確認された2点の「御後絵(おごえ)」。玉城デニー知事をはじめとする関係者らは、少しでも近くで確かめようと、規制線から身を乗り出さんばかりの態勢で見学した。御後絵の前に立つと「思った以上に色鮮やかだ」「こんなにきれいに保存されていたなんて」と感嘆の声を漏らした。
第4代国王尚清とみられる人物を描いた御後絵は縦180・5センチ、横188センチ。琉球王国の象徴である赤と金色をふんだんに使った豪華絢爛(けんらん)さが際立つ。国王の足元部分は欠損しているが全体的には保存状態は良い。
展示された御後絵の軸木には黒字で記された「尚清様」の文字が確認でき、県の担当者は改めて尚清王である可能性が高いと説明した。
もう1点の国王名不明の御後絵は、1枚の絵を3分割したとみられる。顔の部分は擦れているため、表情などは確認できない。毀損(きそん)が激しく公開が見送られた尚敬王と尚育王の御後絵について、県教育庁文化財課の濵地龍磨主任は「いずれも水でぬれた跡があり、どこまで修復が可能か未知数だ」とした。
同氏によると、御後絵は何度も修復され、王府の絵師の記録などによると最後の修復は1818年頃。今回展示された2点も1717年~1818年の間に描かれた可能性が高いという。
特別公開に合わせ、文化財の返還実現へ尽力した在沖米国総領事館元広報・文化担当補佐官の高安藤さんに、玉城知事が感謝状を手渡した。高安さんは「実物を見ることができて感無量だ。御後絵はやっぱりこんなに大きく、色彩が豊かだったんだと驚いた」と語った。 (当銘千絵)