平均年齢65歳 “地域の音”よみがえる 宮前エイサー、35年ぶりに


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35年ぶりに復活させた地元のエイサーを堂々と踊る宮前区エイサー保存会のメンバーたち=うるま市石川の親田原公園

 【うるま】35年ぶりに、うるま市石川の宮前区のエイサーが復活した。宮前自治会(町田宗康会長)が21日に親田原公園で開いた夏祭りで、当時地元の青年会に所属していたメンバーを中心に構成する宮前区エイサー保存会が披露した。会の平均年齢は65歳前後。演舞を目の当たりにした住民たちは「頑張れー」「かっこいい」などとメンバーを鼓舞。会場は熱気と笑顔に包まれた。

 宮前地域には、以前当時の地名を付けた「八区青年会」があったが、核家族化による地域のつながりの希薄化や若者の流出などで活動が途絶えたという。1981年8月に57年生まれの若者たちがチャリティーイベントを開いてエイサーを披露したのを最後に、地元のエイサーが地域から姿を消した。

 復活の発起人は、昨年4月に就任した町田会長(66)だ。「なんとか地元の伝統を復活させ、継承していきたい」との思いから、周囲に声を掛けてメンバーを募った。すると約25人の賛同者が集まり、最高齢87歳というベテランエイサー隊が誕生した。

 本番に向け、保存会が動き出したのは今年の6月初旬。すぐに壁にぶつかる。当時の振り付けや楽曲を覚えていない。「これではメンバーに教えることができない」。八区青年会最後の会長を務め、今回大太鼓をたたいた山内昌二さん(59)に不安がよぎった。

 しかし、山内さんの自宅の押し入れから出てきた1本の古いビデオテープが、状況を打破する。映っていたのは、35年前のチャリティーイベント。「これでいける」。メンバーはビデオの映像や青年会を経験した住民からの聞き取りを基に、練習を重ね、本番に臨んだ。

 太陽が落ち始めた21日午後7時ごろ、100人ほどの住民が見守るステージ前広場。長い間忘れられていた地元エイサーの太鼓と三線の音色が、地域によみがえった。

 チョンダラーを務めた町田会長は「約千人の小さな地域だが、助け合えばこんなに素晴らしいことができる。みんな喜んでるさ」と満足げだった。