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「母の難病、治したい」 宮古島市出身・荷川取美佑さん(開邦高卒)が米難関大に合格 UCサンディエゴ校 医療格差の解消へ意欲 沖縄 


「母の難病、治したい」 宮古島市出身・荷川取美佑さん(開邦高卒)が米難関大に合格 UCサンディエゴ校 医療格差の解消へ意欲 沖縄  カリフォルニア大学サンディエゴ校の合格通知を前に笑顔を見せる荷川取美佑さん=12日、那覇市泉崎の琉球新報社
この記事を書いた人 Avatar photo 前森 智香子

 海外居住経験なしから米国の難関大学へー。3月に沖縄県立開邦高校を卒業した荷川取美佑さん(19)が、カリフォルニア大学サンディエゴ校に合格した。宮古島市出身で、小中高とも公立校で、海外経験は高校2年時に米国へ1週間行ったのみ。米国での学費は給付型奨学金でまかなう。

 母の病気をきっかけに、難病治療の研究と医療格差の解消を考えるようになったといい「諦めずに挑戦したら道が開けた。宮古や沖縄の子たちも挑戦してほしい」とエールを送る。

「苦しむ母の力に」医学の道を志す

 「お母さんの病気は、私が治すよ」。小学生の時から、荷川取さんは繰り返し口にした。幼い頃、母の須美江さん(49)が体調不良に悩まされた。宮古島では原因が分からず、沖縄本島の病院で指定難病の「視神経脊髄炎」と診断され、定期的に本島に通った。母は仕事が好きだったが、体調が優れず、退職を余儀なくされた。「苦しむ母の力になりたい」と医学の道を志すようになった。

 平良中を卒業後、開邦高へ進学。1年時にボランティア部の活動でアフガニスタンからの留学生の話を聞き、「医療格差は世界中で起きている。必要な人たちに医療を届ける仕組みもつくりたい」と、海外の大学を意識するようになった。

 高3になっても、進学は国内か海外かで迷い続けた。米国の大学に魅力を感じていたが、経済的に厳しいと理解していた。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長による財団の予約型奨学金に応募し、昨年9月に合格。財団が指定するアメリカ・イギリスのトップ大学に受かれば、授業料や寮費など大学4年間の必要な費用を受けられることが決まった。経済的な問題をクリアし、海外受験へ本腰を入れた。

得意ではなかった英語、YouTubeや洋楽で磨く

 海外へ行った経験は1度だけで、英語も得意ではなかった。塾や英会話教室に通ったこともない。海外の大学生らでつくるNPO法人「留学フェローシップ」に相談し、試行錯誤しながら対策し、YouTubeや洋楽などから英語力を磨いた。

 出願には英語能力測定試験のスコアが必要で、受験料もかかる。TOEFLより安い語学テスト「Duolingo English Test(DET)」を活用した。DETのスコアは高2の秋は95点だったが、1年後には120点にまで伸びた。

 目標が定まってからは、起きている時間のほとんどを受験対策にあてた。自己分析を繰り返し、英文のエッセーを練った。3月、カリフォルニア大学サンディエゴ校から合格通知を受けた。 

専攻はバイオエンジニアリング 「島へ恩返しも」

 9月26日の授業開始に向け、渡米する。大学ではバイオエンジニアリングを専攻し、医療機器の開発や難病治療の研究を目指す。

 「医療格差の解消に貢献できれば、島への恩返しにもなると思う。今はわくわくする気持ちが大きい」と笑顔を見せる。「苦しくなったら支えてくれた方たちの言葉を思い出し、初心を忘れずに頑張りたい」。夢に向かって大きな一歩を踏み出す。