世界屈指の名門、米ハーバード大学や芸術部門で世界大学ランキング1位のニューヨーク・ジュリアード音楽院を首席で卒業し、現在はバイオリニスト兼起業家として多彩に活躍する廣津留すみれさん。3日、社会課題の解決に取り組む起業家や学生らが交流するカンファレンスイベント「LEAP DAY2020」のプレイベントにオンラインで出演しました。沖縄科学技術大学院大学で最年少管理職の下地邦拓さんと対談しました。
ハーバードに受かるための勉強法、海外留学中に大事なこと、時間の使い方などなど、廣津留さんと、自身も留学経験があるOISTの下地さんとの対談から紹介します。(社会部・稲福政俊)
■ハーバードに受かる勉強法
下地 さらっとハーバードに受かって、さらっとバイオリニストになったと思った人もいるかもしれないけれど、私は大学時代からすみれさんを知っていて、いい意味で普通の人だと思う。いろんなところで努力している。これまでにどういう選択したのか、そのときどういう気持ちだったのか。
廣津留 高校は地元の進学校に行きました。自分の中の一番に受かるのか。単純に自分を試したかった。
下地 英語はどう勉強した?
廣津留 小さいときは英検をミッションにしていた。分かりやすく何級、何級とあるし。とにかく単語。単語増やすのが命。
下地 単語の参考書はどう選ぶのか。
廣津留 レベルはあるが、直感で読みやすそうだとか、それくらい。
下地 時間の効率的有効活用について。学生のときはどうしていた。
廣津留 空いている時間がめちゃくちゃ少なかったから、時間を有効活用しなければならなかった。小学校の時でも1日に2、3時間(バイオリンの)練習をしなきゃいけないと計算しつつ、(残りの時間で)放課後にどのくらいドッジボールができるか考えていた。ドッジしたいから(ほかのことを)短時間で効率良くやりたいというのがまずあった。その中では刻んでいかないと。
■行き当たりばったりでもいい
下地 あえてハーバードを受けつつ、慶応大学も受けていたよね。
廣津留 日本1校とアメリカ1校。ハーバード受かるとか思っていないから、ほかにも選択肢。慶応はSFCをAO入試で受けた。
下地 ハーバードは専攻を途中で変えられる。
廣津留 最初は応用数学。友達が多かったんですよ。
下地 社会学を足してみたり音楽を足してみたり。どういう理由で最初は応用数学に行って音楽に戻ったのか。
廣津留 行き当たりばったりなんですよね。ハーバードの受験も1年以内に決めたり。応用数学の専攻に行ったのは、私がいつもよく遊んだり一緒に勉強したりしていた先輩から「絶対面白いよ」と言われて、行けるかもと思ったから。ときめいた方にテンションが上がったので。
お金持ちじゃないとアメリカに行けない?
下地 親は音楽系に進んでほしいと思っていたのでは? 親にどう相談していたのか。
廣津留 うちは「やりたいのをやったら、自由にして」というスタンスだった。相談と言うより、「これやってもいいよね」という確認をしてもらっていた。
下地 沖縄の学生が次に出てくるのが、お金をどうしたらいいかという悩み。「下地さんの家庭はお金持ちだから」とか言われるがそんなことはない。「アメリカに留学すること=お金かかる」というイメージだ。
廣津留 ハーバード(に通うの)は収入の何パーセントでいいというのがある。ハーバードは寄付の額がすごいので、すごいサポートしてくれる。愛校心も強いので、卒業生が寄付するお金の行き先の一番は奨学金。大分の人が東京の大学に進学してアパート借りて、学費払ってとかいろいろ考えると、(留学してハーバードに通うのと)同じか(ハーバードの方が)安いくらい。
下地 僕も裕福な家庭じゃない。ラッキーなことに奨学金をもらえたけれど、アメリカでは(それだけで)足りないから、どう払うか考えた。日本語のTA(ティーチングアシスタント)をしながら、自分の勉強していることをベースにチューター(大学で学習補助や教授の補佐的な役目)でお金をもらった。寮長になるとご飯代がタダになる。実はそういうトリックがある。
廣津留 お金ないから行けないじゃなくて、お金がないなら奨学金を探す。
下地 柳井財団が毎年何十人も支援している。沖縄からは1人くらいしかいない。みんなそれを知らない。東京だとみんな知っていたりする。情報格差がある。
■「困っている」と言えること
下地 すみれさんはいろんな人に頼っているイメージだ。意識的にやっているのか。
廣津留 いろんな意見をもらった方が選択の時に幅が広がる。「こういうのもオッケーなのか」というのが増えてくる。いろんな分野、世代の人に会うようにしている。
下地 ハーバードは宿題も多い。自分のコンサートも課外活動もある。大変だったことは。
廣津留 1年目は英語圏で生活したのが初めてだったので、授業も何を言っているのか分からなかった。先生のところに行って、困っていると言ったらすごい助けてくれた。 とにかく困ったら困ったと言った方がいいと思った。先生は「分からないのはしょうがない。インターナショナルステューデント(留学生)をみてきているから。サポートするから」という感じだった。こんなのも分からないのかと言われると思ったが、それはなかった。
下地 海外に行くとインターナショナルステューデントに対するサポートはすごい。
廣津留 日本は手を挙げて話す習慣がないから、発言することに対するハードルが高くて。だけど、アメリカだと発言しないと出席したことにならない。「はい、います」ということではなくて「ちゃんと私はこう思う」と言って初めて出席したことになる。
下地 最初は手を挙げるのはつらい思いした?
廣津留 した。全然挙げられない。しゃべるタイミングも大変だった。ずっとディスカッションしているから、いつの間にか違うトピックなって言えずじまい。でも、テクニックだから慣れればいい。メンタルの問題じゃない。
自分の軸があると安心する
下地 ハーバードはいろんなところから来て、いろんな活動している人がいる。自分の違いをどう出すか大変。違いはどう意識していた。
廣津留 そこは日本というより音楽だった。友達つくったのも音楽を通してということが多かった。音楽が自分にあることの安心感はあった。 自分はハーバード生の中で何を軸にしていけるか見極めていた。みんなが素晴らしい中で「私、何もない」じゃなくて、(例えば)会食の店を探すのが得意とかでもいい。スキルベースじゃなくても、誰とでも友達になれるとかでもいい。自分の軸が分かっていると安心する。
下地 音楽以外の強みは。
廣津留 「今日腕がなくなったらどうするか」を考えると、それはそれでやりたいことはたくさんある。音楽回りのことだと思うが、関連分野のプロデュース、人と人をくっつけるとか、やりたいことはたくさんある。 これがないと自分は何をするかなとか、1億円もらったら何するかとか、究極、自分がやりたいこと、得意なことを極論で考える。1億円もらったら宇宙飛行士になる訓練するとか、そういう考え方もあるんじゃないかな。
下地 社会に出ていくと、チームで活動しないといけないことが増える。ジュリアードでカルテットもやっていたが、音楽性で譲れないこともあると思う。チームワークはどう意識していたのか。
廣津留 「これだからこれ」というリーダーにはなりたくなくて。ジュリアードに時に弦楽四重奏を同級生同士で組んで、クラウドファンディングで日本ツアーもやった。みんな個性が強い。例えば、この人はフォルテ(音楽記号で「強く」の意味「フォルテッシモ」の略語)で弾きたい、私はピアノ(音楽記号で「弱く」の意味「ピアニッシモ」の略語)で弾きたいというのがあるとする。 私はどう考えてもフォルテだけど、ちょっとピアノもやってみると分かるんじゃない?と言う。ピアノの人が悪いということにしない。頭ごなしに言うとテンションが下がっちゃう。
下地 コンサートに向けて準備する期間。メンバーも忙しい中で「Xデー」までどういうことをしていたのか。受験とか面接で参考になる。
廣津留 1曲1楽章に時間が掛けられないので、みんな突っ込まない。もし時間が余ったら戻ればいい。ある程度外観を仕上げるのを優先する。勉強も同じ。テスト前に全部カバーするのが大事だから、1個のことを、これが分からないとやっていたら、何も進まない。細かいことにとらわれると良くない。