師の“手”と力走 車いす陸上・上与那原さん 山入端さん手作りグローブ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
レース後、山入端清宗さんが作ったグローブを手に笑顔を見せる上与那原寛和さん=15日午前(日本時間同日午後)、リオ市のオリンピックスタジアム

 【リオデジャネイロで稲福政俊】リオパラリンピックの車いす陸上(T52)1500メートルで4位入賞を果たした上与那原寛和さん(45)は、本大会のレースでいつも、青い樹脂製の手作りグローブを着用していた。競技仲間の山入端清宗さん(63)=沖縄市=が手作りしたものだ。競技の師匠でもある山入端さんと共にリオの大会を戦い切った。

 車いす陸上の選手は握力が弱い人が多い。そのため選手は車輪をつかむのではなく、グローブに付けたゴムに引っ掛けてこぐ。選手にとって、グローブの良しあしは記録にも関わる重要な要素だ。既製品もあるが、多くの選手は自分に合ったものを手作りしている。

 山入端さんは、技術力で定評がある佐喜真義肢の元職人。樹脂を使って細かくグローブの形を調整し、上与那原さんの手の形に合わせた。「人によって好みの形は違う。その人に合った形じゃないと、タイムも出ない」と話し、理想の形になるまで妥協しなかった。

 県内の練習では上与那原さんの後ろを山入端さんが走り、速度計を確認しながら「遅いぞ」「もっとこげ」とげきを飛ばしていた。上与那原さんは「山入端さんのおかげで記録も伸ばせる」と信頼を置く。

 レース後、上与那原さんは「最後まで壊れず持ってくれた。感謝しかない」と話した。

上与那原寛和さん(右)と一緒に練習を行っている山入端清宗さん=8月19日、沖縄市陸上競技場