「はいたいコラム」 楽しい発信は共感を呼ぶ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 島んちゅの皆さん、はいたい~! 皆さん、レンコンは好きですか? 日本一のレンコン産地、茨城県の農業者に講演するご縁を頂きました。テーマは「地域資源を宝に変える農業」。どの地域にも宝はあるわけですが、その磨き方(品質向上)と伝え方(発信)についてのお話です。

 会場へ行く前、知り合いの生産者を訪ねました。有機の土作りで真っ白な「パールれんこん」を栽培する山口ファームさん。収穫最盛期の様子を取材するというのは建前で、実は泥んこのレンコン田に入って収穫体験のおもしろ写真をSNSにアップしようと思ったのです。

 胴長とかっぱを借り、泥の侵入を防ぐためにウエスト部分をタイヤチューブでぎゅうぎゅうにしばってもらいます。しゃがむと胸までつかる泥の中、高水圧ホースを使って掘り出します。水の勢いが強いため必死でホースを握りしめ、もう片方では手探りのレンコン掘り! 技と力の仕事です。ようやく掘り出したレンコンを持って記念写真を撮った後、そうだ! この水圧ホースのパワーを泥の中だけで終わらせるのはもったいないなと思い、肝心のレンコンは山口さんに預け、私はホースを両手に構えて空に向かって、どどどどどーーっ! 消防の出初式さながらに水を放ち、なかなか迫力ある写真が撮れました。

 SNSにアップすると、近年まれに見る大好評で、楽しそう、面白い、迫力すごいなどのコメントと同時にやってみたいという人も現れました。

 情報の性質には2通りあります。茨城れんこんならその農法、栄養、調理法といった「正しい」情報と、もう一つは産地ならではの臨場感あふれる「楽しい」情報です。「正しい」話に人はうなずくしかありませんが、「楽しい」輪には、本能的に加わりたいという参加欲求が生まれるのです。

 「演説よりも演技をしろ」という言葉があります。「コミュニティデザイン-人がつながるしくみをつくる」の著者として知られる山崎亮さんに聞いた考え方で、正論よりも、明るく楽しく振る舞っている人や地域へは、人も情報もお金も集まってくるということです。

 地域の宝の伝え方とは。正しい情報はもちろん重要ですが、それと同じぐらい「楽しい」発信が共感を招き、地域に人を呼び込む力を持っているのです。
(第1、3日曜掲載)

・・・・・・・・・・・・・・・・

 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。