経営方針見えず戸惑いも 南西石油の太陽石油売却交渉 安定供給が絶対条件 


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南西石油のイシカワ社長(当時、左)に石油製品の安定供給確保を求める沖縄県の下地明和商工労働部長(同)=1月、沖縄県西原町の同社

 南西石油(沖縄県西原町)の売却を巡り、親会社のブラジル国営石油会社ペトロブラスと、四国を拠点とする石油元売りの太陽石油(東京)による交渉が大詰めを迎えている。国内企業への承継に道筋が見えたことで、業界関係者は「県内で石油製品の安定供給が確保された」と歓迎する。一方、沖縄で商取引がない太陽石油の進出に「県内の石油製品の価格は維持されるのか、経営方針が分からない」と戸惑いの声も漏れる。国内石油大手の関係者は「事業承継には数カ月から半年はかかる。新たな企業が事業を開始するのは年度明けだろう」と推測する。

■水面下の交渉

 南西石油の入札には国内大手や商社だけでなく、外資企業も関心を示していた。南西石油は県内で出回る石油製品の約6割を出荷し、売上高でも沖縄屈指の中核企業だ。今回のペトロブラスの唐突な日本からの撤退表明や既存事業の縮小、経営に関する情報の乏しさなど外資企業の割り切った対応を受け、県内関係者からは「外資企業が利益を優先して売却を繰り返せば、県内で石油製品の供給が不安定になる」と不安の声が上がっていた。

 こうした中、石油事業を所管する経済産業省資源エネルギー庁は、国内企業への売却をブラジル側に働き掛けていた。経産省関係者は「県内での安定供給確保が絶対条件だった。国が主導して交渉をまとめた」と内情を明かす。

 県の関係者は「国内企業だと資源エネルギー庁の指導・監督の下、国内基準に基づいた業務が行われる。商習慣が違う外資企業に比べると、圧倒的な安心感がある」と胸をなでおろす。

 一方、西日本を中心に「SOLATO(ソラト)」ブランドのガソリンスタンドを展開する太陽石油だが、沖縄に営業所はない。太陽石油関係者は今後の営業方針について「サービスステーションを増やしていきたい。沖縄は対象外ではない」と給油所の県内進出の可能性を示唆する。

■進出の思惑

 南西石油買収の狙いについて、関係者の間には「県内にいる元売り大手に石油製品を供給することで貸しができる。全国各地で供給体制を確保する際、バーター交渉のカードにするのではないか」「拠点とする愛媛県の原油タンクでは容量が足りないので、自前のタンクを確保したいのだろう」など臆測が流れる。

 県内関係者は「太陽石油が今回の投資費用を回収するため、石油製品の卸価格を引き上げるのかどうか全く分からない。卸価格を値上げすれば当然、県民生活にも影響が出る」と今後の交渉の行方を注視する。
(宮城征彦)