【北部訓練場一部返還】菅氏、県政のアキレス腱狙う


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 菅義偉官房長官は8日の翁長雄志知事との会談で、米軍北部訓練場のヘリパッド移設工事が「順調に進んでいる」と報告した上で、工事完了を条件とする同訓練場の約半分の返還について、年内実現を目指して米側と交渉していると明言した。翁長知事は年内返還を「歓迎」すると表明した。知事はこれまで「一方的に工事を進める政府の姿勢は到底容認できない」と移設工事を批判してきたが、この日は工事の手法を批判することはなかった。政府側は知事の“お墨付き”を得たと政治利用し、工事をより強行に進めるとみられる。

 翁長知事は会談後の会見で、菅氏との会談でヘリパッド移設工事の進め方に触れなかったことを問われ、批判的な部分はこれまでの自身の発言から「十二分に伝わっていると思う」と説明した。一方、菅氏からは政府の工事の進め方を顧みる発言はなかった。互いの意識の違いは明白だったが、会談では踏み込んでその点に入ることは避けた。

 北部訓練場のヘリパッド移設工事を巡って、知事を支える「オール沖縄」勢力を構成する県政与党からは、知事に工事反対を明確に表明するよう求める声が上がっている。だが県政は返還計画を定めたSACO(日米特別行動委員会)合意を支持する点から難しい立場にある。

 菅氏は会談の話題を北部訓練場の「返還」に集中させ、知事の「歓迎」を引き出すことで、県政の“アキレス腱(けん)”を狙う意図もうかがえた。翁長知事がこの問題でどのような対応を取るか、工事完了が年内に迫る中、佳境を迎えた。
(島袋良太)