世界一安い検査器、ジカ熱など初期に診断 沖縄・うるま拠点に世界へ


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ウイルス検査キットのパッケージを手に持つAVSSの小林信之代表=那覇市内

 沖縄県うるま市に研究拠点を構える長崎大学発のベンチャー企業・AVSS(エービス)(長崎県、小林信之代表)はこのほど、蚊が媒介して中南米や東南アジアで流行するジカ熱とデング熱、チクングニア熱の三つの感染症を診断できるウイルス検査キットを開発した。感染初期でも検査したその場で迅速に診断できるのが特徴で、販売価格は千円前後を想定する。同社によると、一度に複数の感染症を診断できる低価格な簡易検査キットの開発は世界初という。沖縄発の研究開発により、発展途上国での感染症患者の早期発見、早期治療に貢献する。

 AVSSは、東北大学発のベンチャー企業・TBA(宮城県)と連携して検査キットを開発した。今月から医療機関や研究機関への販売を開始する。1年後をめどに国の承認を得られ次第、一般販売も行う。感染症が流行する中南米や東南アジアでも当事国の承認を得て、順次販売を開始する。AVSSは三つの感染症に加え、日本脳炎の診断を追加したマルチキットの開発にも取り組む。海外進出を視野に県内での製造拠点整備を目指す。

 検査キットはウイルスの遺伝子の一部を特殊な技術で印刷した試験紙を使用する。患者から血液を採取して遺伝子増幅装置にかけ、装置から取り出した溶液を試験紙につける。感染している場合は試験紙がウイルスの遺伝子に反応して発色する仕組みだ。

 従来の検査はウイルス感染後、体内に生じる抗体を検出することで感染の有無を判定した。そのため感染から検査までに2~4週間ほどかかり、感染症への対応が遅れる可能性がある。

 AVSSの検査キットは血液中のウイルスの遺伝子の有無を調べるため、感染初期から診断できる。測定時間は1~3時間程度で、検査当日に結果が分かるため、早期発見、早期治療が可能となる。

 同社によると、欧米医療メーカーの類似製品は1種類ずつしか感染症の診断ができず、価格は1キット数千円以上と高額で、数百万~数千万円の周辺機械と専門オペレーターが必要という。検査キット開発者で長崎大大学院教授の小林代表は「感染症が流行する地域は発展途上国がほとんどで、高額な欧米製品を住民は利用できない。低価格キットを普及させて医療環境を整えたい」と語り、「将来的には流行地域に近接する沖縄に製造拠点を設けて海外展開をしたい」と話した。(宮城征彦)