いじめで不登校 「SOSに気付いて」 今でも心が叫ぶ 


この記事を書いた人 金城 美智子
高校時代のいじめ経験を語る那覇市内の男性=26日、那覇市内

 「頼る人がほとんどいなかった」-。高校時代に受けたいじめで不登校になった那覇市の男性(18)が27日までに琉球新報の取材に応じ、これまでの自身の経験を語った。「いじめられている人からのサインに気付いた人は行動を起こしてほしい」。男性は、いじめをなくすために多くの人が問題に関わることが重要だと強調した。

 男性がいじめを受けたのは県立高校に入学した年の2013年9月ごろだった。急に自分の持ち物がなくなったり、クラスメートからあからさまに避けられたりするようになった。クラス全員が所属する無料通信アプリ「ライン」のグループからも外された。

 同じクラスの中学校時代からの友人にラインで相談したが、友人が他のクラスメートたちにラインの相談内容を転送した。「誰も信じられなくなった」

 その後も無視される状態が続き、担任や学年主任の教員に相談したが「自分たちで解決しろ」と取り合ってくれなかった。両親からも「分かってあげられない」と言われた。

 「親や先生も味方ではない」。気落ちし、高校へ通うことができなくなった。男性は県立高を中退し、県内の私立高に14年4月に再入学したがなじめず、同年12月にその高校も中退した。

 人生に絶望して自殺を考えたこともあるが、肉親の死を乗り越えて懸命に生きる青年の姿を描いたアニメ作品を思い出し、思いとどまった。

 今は「誰かの人生を変えられる作品を作りたい」と映像技術を大学で学び、アニメ業界に入るのが目標だ。だが「また失敗するのでは」との恐怖が付きまとう。いじめによって失われた自己肯定感はまだ取り戻せていない。
 「あの時、SOSのサインに気付いてくれる人がいれば結果は違ったかもしれない。(SOSに気付いた人が)行動を起こさなければ、状況が良くなることはない」。男性は拳を握り締め、切々と訴えた。(塚﨑昇平)