【ワシントン=問山栄恵本紙特派員】米大統領選の投票は8日(日本時間同日夜から9日午後)に実施される。民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官は外交政策で日米同盟重視の姿勢を前面に打ち出す。一方、「米国第一」を掲げる共和党候補ドナルド・トランプ氏は、日本など同盟国に負担増を求める立場を主張している。両候補とも米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設など沖縄の米軍基地に関する言及はないが、日米同盟を巡っては主張が真っ向から対立しており、選挙結果が辺野古移設など在日米軍再編に影響する可能性がある。
クリントン氏はオバマ政権1期目の国務長官として、オバマ大統領が掲げるアジア太平洋に外交安保の軸を移すリバランス(再均衡)政策を主導した。就任後最初の外国訪問先に日本を選んだことからも、今後も現行の日米同盟を維持する方針だ。
クリントン氏は討論会で「日本や韓国などの同盟国に対し、私たちは相互防衛協定を結んでおり、それを順守することを再確認したい」と強調。アジア重視を再定義し、日本や韓国、オーストラリアなど同盟国との関係を一段と強化する。
辺野古移設については、国務長官時代に「普天間飛行場の代替施設建設を含む沖縄の米軍再編の進展に自信を持っている」と断言。日本側に埋め立て申請を含む作業を早期に進めるよう要求するなど、現行計画による普天間問題解決へ強い意向を示していた。辺野古移設を推進する立場で政権運営に臨むとみられる。
一方、トランプ氏は討論会で「私たちは日本を防衛し、ドイツを防衛し、韓国を防衛し、サウジアラビアを防衛し、他国を防衛している。もし彼らが相応の負担をしないのなら、日本を守ることはできなくなる」とし、日本や北大西洋条約機構(NATO)諸国に対し、同盟国側の負担増を要求。在日米軍を撤退させるとの考えを示したほか、安保条約の見直しにも言及した。
トランプ氏が次期大統領に就任すれば、在日米軍の駐留経費のほか、米軍内にも不満が残る在沖米軍のグアムなどへの移転経費などにも、影響を及ぼす可能性がある。
トランプ氏の辺野古移設問題への対応は未知数だ。米有力シンクタンクのアジア専門家は「辺野古移設について、トランプは全くの『白紙』状態だ。今後、判断していくことになるだろう」と指摘。だが別の専門家は「米国の外交政策は誰が大統領になろうとも、継承されていく。日本政府が代替案を提示しない限り、米側から辺野古移設を見直すことはない」と強調した。