【沖縄税制縮減】 「マル政」→「◯☓審議」 沖縄県にどんな宿題 


この記事を書いた人 金城 美智子
復帰特別措置で8回延長されてきた酒税軽減措置

■県幹部の胸中複雑
 政権与党の税制改正大綱が決まり、沖縄関連税制は「9項目のうち8制度で適用期限の大幅縮小」という自民党税調の処理案がそのまま盛り込まれた。翁長雄志知事は一定の評価を示したが、決定内容やその過程を巡り、県幹部や自民県連幹部の胸中は複雑だ。

 沖縄関連税制の複数を担当する県幹部の一人は「2年の延長では企業進出のハードルは高くなる。期限後も進出企業は所得控除などを活用できるが、2年後に制度がどうなるか分からないため企業はリスク回避で県内進出を断念する可能性がある」と影響を危惧する。今回の税制議論で求められた「実績」作りに向けた壁はさらに高くなった。

■政治に翻弄
 一方、今回の税制延長議論が政治に翻弄(ほんろう)された感も否めない。酒税の軽減延長を求めていた県酒類製造業連絡協議会に自民党が“見返り”として党員確保や職域支部設置を提案した。この動きを主導する二階俊博党幹事長は漁業関係者らにも党員確保を促す動きを見せており、業界の要望実現と引き換えに党勢拡大への協力を求める動きも表面化した。

 さらに幹事長側は今回確保した党員を、二階派に近く復党問題で揺れる長崎幸太郎衆院議員(無所属)の“実績”とすることを見込んでいた。県や業界が二階幹事長に接近したことで、沖縄関連税制が自民党内の派閥抗争に利用される側面もあった。

■「聖域」が外れた?
 自民県連幹部の一人は「2年延長」の結果より、議論の過程を問題視する。沖縄関連税制はこれまで政治的に判断される「マル政」事項として取り扱われていたが、今回は財務当局の査定によって判断される「○×審議」の扱いとなった。「マル政から格落ちしたということは『沖縄問題は聖域』という見方が外れたということだ」と分析し、「2年後ではなく、その先が問題だ。5年後に沖縄振興計画や復帰特別措置法をどうするかと議論するとき、今回の流れがどうはね返ってくるかだ」と指摘した。

 県が自ら策定した沖縄21世紀ビジョンの指針でもある、政府決定の沖縄振興基本方針は「沖縄の持つ潜在力を存分に引き出すことが、日本再生の原動力にもなり得る」とうたっている。政治状況に左右されることなく、全国に沖縄振興の必要性を納得させる実績をつくっていけるか、「県に大きな宿題が突き付けられた」(前出県幹部)格好だ。
(当銘寿夫、宮城征彦)

※本欄は本紙に随時掲載の「単眼複眼」を電子版用に見出しを編集しています。