鎌倉芳太郎資料集全7巻発刊 沖縄県立芸大 紅型、調査ノートで完結


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県立芸大が発刊した鎌倉芳太郎資料集全7巻

 県立芸術大学(比嘉康春学長)は、多くの沖縄関係資料を収集した故鎌倉芳太郎氏が残した資料をまとめた「鎌倉芳太郎資料集ノート篇4 雑纂(ざっさん)篇」を発刊し20日、記者会見を開いて報告した。紅型と調査ノートを中心にまとめた同シリーズの7巻目となり、刊行事業はこれで終了する。

 比嘉学長は「本学に寄贈された膨大な資料を整理した。実物は文化財にも指定され、閲覧が難しい。この資料集を沖縄の文化・芸術研究に役立ててほしい」と話した。資料集は県内外の大学や公立図書館に寄贈する。鎌倉氏の資料の一部は同大付属研究所のホームページでも公開している。

 鎌倉氏は大正末期から昭和初期にかけて沖縄を調査し、染織を中心とした美術工芸から建築、文学、民俗、芸能、歴史と多岐にわたる資料を収集した。紅型の型紙や裂地(きれじ)のほか、写真やガラス原板、調査ノートなど合計7500点以上が同大に寄贈・所蔵されており、一部は国の重要文化財に指定されている。

 資料集はこれらの記録として紅型に3巻、ノートに4巻を当てた。紅型を担当した柳悦州教授は「整理の仕方から模索した」と振り返った。最も古いもので1797年の型紙をはじめ型紙1414点、裂地755点を、生地の色や型紙の大きさ、模様の大きさや種類などで分類。染料の色の種類や模様の構成も分析・明記し、今後の実作にも役立つ情報を盛り込んだ。

 ノート篇は、「美術・工芸」「民俗・宗教」「歴史・文学」「雑纂」に1巻ずつ分類。今では見られない祭祀(さいし)、沖縄戦で消失した中城御殿蔵書の「古事集」の書写など、ノートの中にしか残っていないものもある。

 波照間永吉名誉教授は「より利用しやすくするため4巻を通した総索引や、書写された文書の出典リストも必要だ」として、刊行作業へ協力を求めた。