「海の命失われる」 マリンスポーツ「SUP」プロ選手 心の「家」破壊に怒り


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オスプレイ撤去を求める緊急抗議集会に家族で参加し、ガンバロー三唱をする荒木汰久治さん(中央)、妻の園子さん(左)、息子の珠里君=22日午後、名護市21世紀の森屋内運動場

 【名護】オスプレイが墜落した名護市安部区に住むマリンスポーツ「SUP(サップ)」のプロ選手・荒木汰久治(たくじ)さん(42)は、安部の海を「家のような存在」と語る。海に出る年間300日のうち、約半分は安部の海で子どもたちと練習などで過ごす。祖父2人の遺骨の一部を散骨した経緯もあり、いつも見守ってもらっているという思いを抱いている。家であり、祖父が眠る安部の海にオスプレイが墜落した。回収作業で岩礁などが傷付けられ「心が切り刻まれる思い」と明かす。「『海で良かった』というのは全く違う。海の命が失われている」。22日に同市で開かれたオスプレイの配備撤回を訴える緊急抗議集会にも妻子と参加した。

 熊本県出身の荒木さんは国内外を舞台にマリンスポーツで活躍する中、2002年ごろから沖縄に住み、糸満市、宜野座村を経て12年ごろ妻・園子さんの地元・名護市安部へ移り、家族5人で生活してきた。

名護市安部の海で息子の珠里君(左)と一緒にSUPの練習をする荒木汰久治さん=22日

 墜落後の深夜。パトカーの光を見て国道側へ出ると大勢の機動隊員らがいた。しかし何があったのか聞いても教えてくれない。「なぜ地元の人に何が起きたのか教えてくれないのか。この人たちは僕らのためにいるんじゃないと感じた」

 15日朝。荒木さんは墜落後、初めてSUPで海に出た。機体に何を積んでいたのか不明な中、環境汚染を心配した。海をのぞき込むと、魚やウミガメがいつものようにたくさんいた。一方で大破したオスプレイを間近に接し「がくぜんとした。あまりにも異様な雰囲気」だった。

 今までは基地問題を巡り「(米軍機が)上を飛んでも1分間ぐらい我慢していれば何とかなるしと、当事者になりそうでなり切れなかった」と振り返る。墜落後は「『明日はわが身』でみんな当事者。生命の危機を感じた」

 率直に「地元の人だけではなく、パイロットも含めて誰も死なずによかった」と思うが、墜落と回収作業に伴う自然破壊に「海の命が失われる」と強く怒る。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う埋め立ても危惧する。「海がなくなったらこの島は全てをなくす。海産物だけでなく、例えば観光資源も海から来る。とても大きな教えで、(今回の墜落でその大切さに)気付くきっかけになると思う」。海をよく知り、海で暮らす者として警鐘を鳴らしている。(古堅一樹)