「はいたいコラム」 もっと切れ端に光を!


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 島んちゅのみなさん、はいたい~。今年も明るくすこやかに!よろしくお願いします。さて、みなさん、「カステラの切れ端」は好きですか?焦げ目がついてザラメが底にたまっておいしいですよね~。先ごろ、このカステラの切れ端がツイッターで話題になりましたね。長崎本舗の「カステラのきれはし」という商品パッケージに「きれはしは、切り分ける際に、わずかしかとれない希少品です」という説明文が添えられていたことから「すてきな言い回し」「ものは言いよう」「プレミアム感満載」「ポジティブ過ぎる」などなど賞賛、絶賛のリツイートが2万4千件を超え、大評判になったのでした。

 「希少品」という表現を、当の社長は「思いをそのままつづっただけ」と語ったそうですが、高級食材や贅沢品には使っても、カステラの切れ端に言う人はおそらく他にはいないでしょう。カステラ愛あふれるこのユニークな発想が、斬新さを通り越しておかしさを生み、笑いながら拍手してしまうような共感を招いたのではないでしょうか。

 同時に、食品ロス問題が深刻な中、廃棄を減らすものづくりは社会に歓迎され、メーカーのメリットはもちろんですが、実は買う方も無駄をなくす活動に貢献する心地良さを伴うのです。

 関わる人を笑顔にし、幸せにする商品や経済は「エシカル(社会貢献や応援消費)」と呼ばれ、とりわけ食の世界では「イートグッド」なる言葉が生まれています。良い生産物語を持った食は人に幸福感をもたらし、結果的に店が繁盛するという考えです。

 直木賞作家で料理上手としても知られた向田邦子さんのエッセイに「海苔巻の端っこ」というのがあります。遠足の朝、母が作る海苔巻の切れ端を父と取り合う話に始まり、こう続きます。

 「端っこが好きなのは海苔巻だけではない~カステラの端の少し固くなったところ、特に下の焦茶色になって紙にくっついている部分~(人の分まで)分けて貰って、丁寧にはがして食べた」

 向田さんが注目したのですから、カステラの切れ端的なマーケットは他にも存在するでしょう。メインもいいけど副産物にも光を当てるものづくり。どんな切れ端も発想次第で活躍の場があるものです。神は端っこに宿る、ですね。

 (フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。

※次回は2月5日に掲載します。