「病に負けぬ」画集発行 左半身まひの宮城智子さん


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画集をPRする(左から)比嘉浩司さん、宮城智子さん=沖縄市美原のいきがいのまちデイサービス美里

 沖縄市のいきがいのまちデイサービス美里を利用する宮城智子さん(59)と、作業療法士の比嘉浩司さん(26)が“合作”で画集「ともことひろし」を制作した。左半身まひの症状がある宮城さんが描いた絵手紙と、リハビリに励む宮城さんの姿に触れ、作業療法士として成長する比嘉さんとのやりとりなどがつづられている。宮城さんは「やる気があれば何でもできることを多くの人に知ってほしい」と語った。

 宮城さんは、30代で原因不明の関節リウマチを患った。右手が変形し関節に痛みが走る。仕事を辞め、一時は寝たきりだった時期もあった。53歳の時に再び病が襲い、脳出血で2度倒れた。医師からは「起き上がることはできない」と言われたが、宮城さんは「負けてたまるか」との思いでリハビリに励み、4カ月後には車いすで移動ができるようになった。

 画集は「ひろしはわかっていなかった」の一文から始まる。宮城さんがデイサービスに通い始め、ボランティアをしていた比嘉さんと出会ったころの話だ。「絵手紙をやりたい」と話していた宮城さんに、比嘉さんは絵の具セットを贈った。しかし、絵の具はふたの開け閉めが片手では難しい。それでも宮城さんは「ありがとう」と受け取った。

 「何も分かっていなかった」。比嘉さんは反省を胸に、利用者の思いや必要としている支援を見極める努力を続けた。宮城さんと向き合うことが作業療法士としての成長につながった。

 宮城さんの絵手紙は果物や花の静物画が中心だ。筆ペンで下書きし、水性の色鉛筆で色付け、仕上げに水筆で色や輪郭をぼかす。作品が増えたころ、宮城さんの夢だった個展の開催を比嘉さんが中心となり企画し、2013、14年に開催した。目標だった画集の制作も、比嘉さんの友人らを通じてカメラマンやデザイナーが集まり、16年9月に完成した。

 宮城さんは「皆さんの支えで実現した」と感謝。絵を描くことが好きで一時は画家を目指していた比嘉さん。「宮城さんに負けられないと最近制作を始めました」と明かすと、宮城さんは「そうなの?」と驚き、うれしそうに笑った。

 画集の販売はしていない。問い合わせは、いきがいのまちデイサービス美里(電話)098(989)3645。(田吹遥子)