沖縄県産焼却炉「チリメーサー」、バリ島で活躍 黒煙出さず苦情減


この記事を書いた人 志良堂 仁
小型焼却炉「チリメーサー」をバリ島に設置したトマス技術研究所の福富健仁社長(左)とワンガヤ総合病院のセティアワティ・ハルタワン院長(右)=22日、インドネシア・デンパサール市のワンガヤ総合病院

 【インドネシア・デンパサール市で与那嶺松一郎】小型焼却炉「チリメーサー」を開発・設計するトマス技術研究所(うるま市、福富健仁社長)が、インドネシアのバリ島デンパサール市の総合病院で2016年末から焼却炉の運転を始め、ごみ問題を抱えるインドネシアで医療廃棄物の適正処理に挑んでいる。県内離島に流れ着く漂着ごみを島内で処理するために確立した中小企業の技術が、日本の政府開発援助(ODA)事業として新興国の課題解決を支援するとともに、沖縄発の製品の海外普及へ一歩を踏み出した。

 沖縄と同様に多くの島々からなるインドネシア。急速な人口増加や経済成長に伴って廃棄物の量も増えているが、処理のほとんどを埋め立てに頼り、最終処分場の容量が切迫している。ごみを運搬するには海を渡るなど回収・管理に経費や手間がかかり、不法投棄の問題も大きい。

 トマス技研は国際協力機構(JICA)が実施する「中小企業海外展開支援普及・実証事業」に採択され、16年12月からバリ島中心地のデンパサール市にある市立ワンガヤ総合病院の敷地内でチリメーサーの運転を開始した。

 チリメーサーの最大の特性は、廃棄物を完全燃焼させて黒煙を出さない点にある。ダイオキシンを高温で分解し、日本の排出規制値の50分の1に抑える。炉内の燃焼効率を高める独自の自動制御システムがトマス技研の誇る特許技術となっており、06年に環境省地球温暖化防止活動表彰で環境大臣賞(技術開発・製品化部門)を受賞している。

 ワンガヤ総合病院では既存の焼却炉で医療廃棄物を処理していたが、黒煙や悪臭がひどく、付近住民からの抗議で焼却炉の使用が朝と夜に制限されるなど問題を抱えていた。アリット・パラウィタ副院長は「今は煙が出ないので、周囲の住民も焼却炉が動いているのに気付かないほどで助かっている」と語る。

 チリメーサーは漂着ごみの焼却用などで県内全離島に設置されているのをはじめ、鹿児島県や長崎県の離島を含めて国内で約70台の導入実績がある。ワンガヤ総合病院に導入したチリメーサーの設置面積は1・8平方メートルと畳1枚ほどの小型炉で、病院から出る日量100キロの廃棄物処理に対応する。

 福富社長は「施設を大型化して広域的に集めるやり方ができればいいが、離島や山間地のような場所ではコミュニティーに合った大きさの焼却炉を分散させ、地域で処理を完結させるやり方の方が向いている。沖縄で積んだ経験を、同じ島国のインドネシアで発揮したい」と意気込んだ。