トイレから性の多様性尊重 自治体、ホテル 工夫さまざま


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 性の多様性を尊重する取り組みが広がっている。LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)など性的少数者の当事者が生きやすい社会を目指し、パートナーシップ登録制度や相談窓口の開設など行政の具体的な施策が始まっている。トイレもそのひとつ。既存のトイレに表示を記したり、改装したりして誰もが入りやすいように整えている自治体やホテルの実践を紹介する。

<今帰仁村歴史文化センター>アート展示「入りたくなる」

トイレ内のギャラリーで笑顔を見せる今帰仁村歴史文化センターの石野裕子館長=今帰仁村歴史文化センター

 今帰仁村歴史文化センターは「誰もが入りたくなるように」と、施設内の多目的トイレをミニギャラリーに改装し、1月末にオープンさせた。企画した石野裕子館長は「アートを楽しみたい人なら、性別や障がいに関係なく誰でも利用できる」と語る。ギャラリーでは5月ごろまでイラストレーターのうちまゆみこさんの作品を展示する。

 石野さんがトイレギャラリーを企画したのは、心と体の性が一致しない性的少数者の人たちがトイレの利用に悩んでいると知ったことがきっかけ。「困っている状況を変えないと理解が形にならない」と思い立ち、16年春、館長に就任してすぐに多目的トイレの活用に取り掛かった。

 ただし、車いす使用者や高齢者、子ども連れなどが通常利用する多目的トイレは、そうでない人にとっては入りにくい。「誰でも入れる」と表示を変えるだけでは性的少数者の人が入りやすくなるわけではなく、周りの目を気にしなくてもいい配慮と工夫が必要だと思った。ヒントになったのは知人の「テーマパークみたいなトイレならみんな入りたくなる」とのひと言。そこからギャラリーのアイデアが浮かんだという。

 トイレは、壁の上半分が展示スペースなので「ハーフウォール+バスルームミュージアム」と名付けた。トイレ名を書いたポスターを多目的トイレやおむつ交換スペースの表示と共にドアに掲示している。石野さんは「ちょっとした工夫で、誰もが安心して利用できるトイレになるはず」と期待している。

<パームロイヤルホテル>「理解広げる契機に」

 

トイレの扉に新しいマーク(一番上)を貼り、誰でも利用できるようにした「ジェンダーフリートイレ」。改装のいきさつを語る高倉直久さん=那覇市牧志のパームロイヤルホテル那覇

 「LGBTフレンドリーホテル」を打ち出しているホテルパームロイヤルNAHA(那覇市牧志)は昨年12月、1階ロビー内の多目的トイレを改装して「ジェンダーフリートイレ」を設けた。入り口の扉にはこれまで、車いす利用者や妊婦のマークを表示していたが、性別に関わりなく誰もが利用できるという意味を込めたマークを新たに加えた。

 トイレの床の色を光沢のある灰色に変え、壁には幾何学模様の油絵を掲げた。植物の図柄を施した荷物置き場を設けるなど、リラックスして使える空間にした。

 トイレの改装を思い付いたのは総支配人の高倉直久さん。心と体の性が一致しないなどの理由から、男女別のトイレ利用に葛藤を感じる性的少数者がいることを知人やメディアで知り「できるとこから変えたい」と行動した。

 高倉さんは「LGBTへの理解を広げるきっかけにしたい。トイレの改装は少ない費用で、いち早くできること。他のホテルや企業にも広がってほしい」と願いを込めた。

<那覇市役所/協働プラザ>虹色ステッカーで周知

誰でも入れるトイレであると分かりやすくしている「レインボーなはステッカー」

 那覇市は1月から、市役所本庁舎などの多目的トイレに性の多様性を尊重する虹色のシール「レインボーなはステッカー」を貼り、性別に関係なく誰でも入れるトイレであると分かりやすくしている。ステッカーを貼っているのは、市役所本庁舎の多目的トイレ15カ所となは市民協働プラザ(同市銘苅)の多目的トイレ10カ所。なは女性センターが入居する協働プラザから始め、本庁舎に広げた。

 なは女性センターの担当者は「車いす優先と書かれた多目的トイレや男性用、女性用と分けられたトイレが利用しづらいと感じている人が少しでも利用しやすくなればいい」と話した。