沈黙は次の犯罪生む 「性暴力」巡り対談


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
性暴力に反対してきた運動の歴史を振り返り、再評価することの重要性を訴えた北原みのりさん(中央)と山城紀子さん(右)の対談=19日、那覇市西の男女共同参画センター・てぃるる

 19日に那覇市の県男女共同参画センター・てぃるるで「性と国家」をテーマにトークショーが開かれた。登壇したのは作家の北原みのりさんと、ジャーナリストの山城紀子さん。2人はトークの中で、性暴力は人権問題であり性搾取として、日韓の女性たちが闘ってきた運動を確認した。

 北原さんは日本軍の「従軍慰安婦」に関連して「日本だけを批判するのはアンフェアだ」という橋下徹前大阪市長の発言を批判し、「このような発言が許される日本社会で、女たちの闘ってきた歴史をフェミニストが再評価して語り継ぐことが重要だ」と呼び掛けた。

 北原さんは2015年、性買春の現場で火災の犠牲になった女性5人を弔う「タンポポ巡礼団」の一員として、韓国の群山(クンサン)を訪問した。大学生ら若者が空き地になっている現場を訪れ、被害女性を追悼している様子や、惨事を記録にとどめようと国会議事堂前で開いている集会を紹介した。

 ソウルの日本大使館前に置かれた「慰安婦少女像」を撤去させないように、若者たちが集まってろうそくをともしながらデモをする様子にも言及し「韓国はすごく希望が見える運動を行っている」と共感を寄せた。

 山城さんは、太平洋戦争中に多くのアジア女性を日本軍「慰安婦」にした行為を戦争犯罪として昭和天皇や政府・旧日本軍責任者らを裁いた民間国際法廷「2000年女性国際戦犯法廷」を紹介した。法廷では、元慰安婦だけでなく、元日本兵の男性2人が加害者の立場から中国戦線での体験を語ったことなどを紹介した。表に出にくかった証言だったが「日本のメディアが驚くことに黙殺した」と批判した。

 被害者が被害を沈黙するとなかったことになり、性犯罪を許してしまうと警鐘を鳴らした。