辺野古護岸着工(解説) 作業進行は不透明 「新基地建設」の出発点は?


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 政府は25日、米軍普天間飛行場の移設に向けた辺野古海域埋め立ての護岸工事に着手した。政府は「確かな一歩」(菅義偉官房長官)と胸を張るが、移設に反対する沖縄県や名護市の同意を得られていない中、作業が円滑に進むかは不透明な要素が多い。根強い県民の抵抗に加え、翁長雄志知事も持ち得る権限を駆使して徹底対抗する姿勢を鮮明にしており、県側と政府の対立は一層激しさを増す。

 2013年12月に仲井真弘多知事(当時)が辺野古の埋め立てを承認し、政府は当初14年度内にも本体工事に着手することを計画していた。しかし知事選や衆院選への配慮、訴訟などで度々中断し、当初の工程より2年程度の遅れが生じている。

 25日の護岸工事着手は埋め立てに向けた新たな段階に入ったとも映る。しかし埋め立てには今後5年を要し、その後の施設建設の工期は4年半が必要だ。このため完成までに、最低でも約10年かかるとみられている。

 辺野古の新基地建設の理由は普天間飛行場の返還だ。しかし「普天間」の返還はそもそも、1995年に起きた米兵による少女乱暴事件をきっかけに、日米両政府による県民の負担軽減策の取り組みとして始まったはずだ。しかし内実は多くの県民が望んでいない県内移設が強要され、軍港機能も備えた軍事拠点の更新強化にすり替わっている。

 政府が県民の反発が強い辺野古移設の強行を続けるのならば、今後もさまざまな紆余(うよ)曲折が続くことになる。「辺野古唯一」の方針を変えず、負担軽減の原点に立ち返って県外・国外の移設を模索しないのであれば、政府が思い描く通りに工事が進む見通しは立たないだろう。
(仲井間郁江)