おひさま日記子育てカフェ 悩みや笑い、涙を共有


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 発達障がいについて一緒に考えようと17日、琉球新報本社で開かれた「おひさま日記子育てカフェ」。子育て中の母親ら11人が、広汎性発達障がいがある双子の日常を描いた6コマ漫画「天才児ひなとかのんのおひさま日記」を琉球新報で連載している森山和泉さんを囲んだ。子どもたちのオリジナルな生き方を語り合い、日々の子育ての工夫や困り感、笑いや涙を共有した。(文中、参加者はニックネーム)

「おひさま通信」のひとコマ。発達障がいを持つ子どものことを、たくさんの人に一緒に考えてもらいたい―。そんな思いが込められている

「子の特性」知って

 

 子どもの特性について語り合った複数の参加者からは、「同時に二つの動作をすることが苦手」という声が上がった。

 アスペルガー症候群を持つ30代の娘と暮らすサンゴさんは「キッチンのシンクに使ったコップを置くついでに、冷蔵庫の中の物を取って、と頼んでも、娘はできないと言う。動作を順序立てて説明して『お母さんは足が痛いから、取ってちょうだい』と取ってほしい理由まで具体的に説明している」と話した。

 森山さんは「発達障がいの人たちは応用がきかないが、それこそが特性。どうフォローして社会とつなげてあげるのかは、一番身近にいる家族の役割かと思う」と答えた。

 日々、つまづきが多く、ストレスを抱えがちな発達障がいの子どもたち。家での向き合い方について語ったのは、ゆうさんだ。「学校で皆と同じことができず落ち込んで帰ってきた時も、家では『オッケー、大丈夫だよ。リラックスして』と伝えていた」と話す。家族で子どもの自己肯定感を育ててあげようと、本人の意思や希望を尊重したという。

 サンゴさんは、子どものことでワジワジー(イライラ)した時の対処法を明かした。「彼女からもらった『私を産んでくれてありがとう』という手紙を見返して、産まれた時のうれしさを思い返している」。サンゴさんが読み上げた娘さんの手紙の文面に、参加者もほろりとした様子だった。

 高校生になった「ひな」さんと「かのん」さんの近況も報告された。2人は現在、単位制高校に通う高校4年生。進路を考える時期を迎えている。

 森山さんは2人の就職を見据え、昨年療育手帳を取得した。「これまで必要性を感じていなかったが、障がいを持つ1人の人間が成人して独立するということに関しては、やはり公的支援を受ける方がいいと考えた」と思いを語った。手帳を取得したことで、これまで見えなかった就労支援の情報が提供され、進路に関していくつかの選択肢が見えてきたと話した。

 参加者には、森山さん手書きの「おひさま通信」も配られた。関わり方も解決法も一つじゃない。肩の力を抜いて、子育ての真ん中にある「楽しい」を再確認しよう―。一緒に歩む森山さんからの“エール”を読み「参加してよかった」と参加者から声がもれた。

「小1の息子が、先生の指示に従うことが苦手。話をよく聞いて理解し、行動に移すためのコツを教えて。  ―ポンくんママ」

子どもを見守って

 森山さん 今、小学校で学習支援のお手伝いをしている。子どもたちの集中力が散漫になって、先生が黒板の前でお話をしていることにすら気付かない場面がいっぱいあるが、支援をする時に、体に触れることが嫌じゃない子に関しては、肩をトントンとたたいて、先生のいる方向を指すということをしている。言葉がなくても、子どもたちは今はそっちに集中するんだと気付いてくれる。

 仕事として子どもたちを見てみると、小学校低学年の時期は、どの子もすごく伸びると実感している。親も少し安心して、見守る気持ちも大切と思う。

 なおこさん 子どもたち、先生の話を聞いていないようだけど、実はちゃんと聞いている。邪魔しているように見えて、実は彼らなりに楽しんでもいる。輪の中で聞けなくても、体の半分窓から出ているが、顔は先生を見ている、みたいな。

 先生も輪の中に入れようと一生懸命になると思うが「この子はちゃんと聞いているよ」と親が先生にうまく伝えられたら、こじれるような声掛けも減って少しずつ距離が縮まると思う。

 森山さん かのんもこういう傾向があって、私も悩んでいたが、本人が高校生になって、小学1年生の頃を振り返った時に「先生は話をよく聞きなさいっていうから、私は耳を先生の方に向けてたんだ」と言ったんです。そうするといつも怒られていたと。「ああ、そうだったんだね、あなたにはあなたの努力があったんだね」と10年たって初めてかのんのことを理解した。

 一生懸命耳を向けているが、特性上目がきょろきょろしているので、はたから見ると全然集中してなくて話を聞いていないと映る。大人がそれを分かっていなかった。大人がゆっくり見守るというのと、体の半分教室から出ているのに、聞いている、まさにそういう子たちだというのを分かってほしいと思う。

「2人の就職をどう考えているの。  ―糸満ママ」

どんな仕事でもいい

 森山さん 将来は自立してほしいと思っているが、どんな形の自立でもいい。アルバイトでもいい。そこから始めてもいいかなと思う。

 発達障がいがあるお子さんが高校に合格したよと聞くと、わがことのようにうれしいし、近所のコンビニでアルバイトをしていると聞くと、良かったと思う。次はわが家の娘たちが行く道であって、それを誰かに伝えると、うちより小さなお子さんの励みになるかなと。

 先輩ママに教えてもらった知恵を実践して、またそれを後輩ママたちに伝えていく…。バトンタッチできるようなお母さんたちの関係が一番かなと思う。

「娘は働けないため、本人の好きな語学の勉強をさせたいが、社会にどんな支援を求めるべき?  ―サンゴ」

通う場所つくろう

 ねこさん 参考になるかは分からないが、私は、大学を卒業した息子の就職のことで悩んだ。息子は今、就労支援機関に通っていて、そこからの紹介でアルバイトをしている。職員も息子の特性に理解があり、バイト先にはジョブサポーターもついているよう。助けてもらっていると思うとほっとする。

 アルバイトも期限をつけてやっている。区切りが分かっているものに対しては、達成感が得られるので、ちょっとずつちょっとずつ、期限を延ばしていければいいと思っている。

 サンゴさんの娘さんも、通うところをつくる、外に出るということができればいいかなと思う。

「小学校と違って、中学校での過ごし方が見えなくなった。不安やもやもやをどうしたらいい?  ―なおこ」

先生とのつながりを

 森山さん 私は学校での様子が見えない分、先生とどうつながるかを心掛けた。言い方は悪いが、娘を商品に見立てて、テレビショッピングの商品紹介並みに「すてきなんです、ぜひ!」と言っている。

 娘のマイナスなことばかり言うと、先生も身構えてしまう。でも学校の中では先生にお願いするしかなくて。だから、娘がどれだけキラキラしている存在なのかをアピールすることに徹した。

 人は楽しい話を聞くと、また聞きたくなるでしょう。運動会や参観日、学習発表会の場で、私がトップセールスマンになって「娘どうですかー?」と言ったりする。そうすると「娘さん、この前こうだったよ」と学校からも聞けるようになった。