平和の象徴であるハトの壁画を世界各地で描いている鹿児島県枕崎市の画家、東慎一郎さん(47)が来県し、南風原町新川の博愛病院の外壁に「平和の壁画」を15日、完成させた。そこには「平和を考えるきっかけになれば」との思いが込められている。
東さんは中学校や高校の美術講師などを経て、現在は家族でデザイン会社を経営している。
平和の壁画は2014年に描き始めた。きっかけは、教え子を訪ねてエジプトとヨルダンを旅したこと。滞在中も自爆テロがあり、元パレスチナ難民から話を聞く機会もあった。自分も平和のために何かしたい。その思いが東さんを「壁画」に向かわせた。
これまでインドや韓国、ウクライナ、米国など9カ国でハトの壁画を描いてきた。節目となる10カ国目は日本。「住民を巻き込んだ唯一の地上戦があった上、今も米軍基地問題に苦しむ場所で平和を考えたい」と沖縄を選んだ。博愛病院の副理事長、仲本譲さん(37)は高校の教え子で、壁面に高さ12メートルの足場も用意してくれた。
壁画はこれまでで最大の縦9メートル、横7メートル。一輪のヒナギクをくわえているハトを描いた。ヒナギクの花言葉は「平和」だという。
完成作を見た仲本さんは「壮大で圧倒された。瞳の描写もすごくリアル」と語った。東さんは「世界がどんどん不安定になる中で、もどかしい思いはある。直接的ではなくても、平和のために、一人一人にできることがあると思う」と話した。