【糸満】学校を守るヒーロー集団は「おやじ」―。元PTA会長や自治会長ら中年男性20人ほどで構成された「おやじの会」が、糸満市の西崎中学校で清掃活動などを通して子どもたちの安心と安全を守っている。メンバーは普段、造園や造船、建築などを本業とする「普通のおやじ」たち。メンバーの一人、前門昌也さん(54)は「世話になった地域に対し、当たり前のことをしているだけ」と話す。
「足場を組んで、手の届かない壁の汚れを高圧洗浄機で清掃してくれた」「長さ5メートル以上ある垂れ幕を校舎の壁面に設置できず困っていたら、ある日重機に乗ってやってきた」―。
教職員やPTA役員らが困っていると、おやじたちはさっそうと現れ、問題を解決して去って行く。PTA活動の延長として、同会は10年以上前からこうした活動を続けているという。
4月29日、「おやじの会」のメンバー5人が西崎中学校に集まった。新任職員の歓迎をするためだ。「困ったことがあったらいつでも言ってください。僕たちは暇だから、すぐ来ますよ」。会場に笑いが起こり、一気に場が和んだ。「一人一人の得意分野を生かして地域を助けてくれる、ヒーローのような存在です」。同校の諸見里勲校長は感謝しきりだ。3月は造園業の男性を中心に、卒業生向けに花文字の飾りを作った。
溶接業の男性らは新学期に向けて教室のタイル修繕をした。メンバーの多くは日曜日集まって作業をするため、会の存在を知らない職員も少なくないという。
「月曜に出勤して、きれいになった花壇や校内に驚く職員がいる。おやじの会の話をすると、さらに驚くことが多い」と諸見里校長は話す。
「おやじの会」は何人で組織されているのか、メンバーにも分からないという。「できる人が勝手に集まっているから。暇なおやじの居場所づくりだよ」と笑いを誘う与那幹夫さん(57)。「そのおかげで、私たちや子どもたちが、安心していられるのよね」。“ヒーロー”の飾らない言葉を聞いた教職員は思わずつぶやいた。(嘉数陽)