在沖海兵隊 グアム移転見直し マイク・モチヅキ氏に聞く 九州が一番合理的 「朝鮮有事、沖縄遠すぎる」


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 ネラー米海兵隊総司令官が北朝鮮の核問題などを念頭に、在沖米海兵隊のグアム移転計画を見直す可能性に言及した。発言を受け、翁長雄志知事は「辺野古新基地建設も拙速に前に進めるのはいかがなものか」と述べ、普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画にも見直しを求めた。ネラー氏の発言から今後どんな影響が考えられるか。沖縄の基地負担軽減を提言し続けている米ジョージ・ワシントン大のマイク・モチヅキ教授(日本政治、日米関係論)に聞いた。(聞き手・座波幸代)

「抑止力より、危機管理、危機対応の議論がもっと必要だ」と語るマイク・モチヅキ氏=米ジョージ・ワシントン大

 ―ネラー氏がグアム移転見直しの可能性に言及した。

 「2006年の日米合意で辺野古への代替施設建設計画や米軍再編は決まったが、この11年間で安全保障環境は急激に変化した。一つは中国の台頭。そして北朝鮮の核開発だ。06年の段階では6者協議による外交面での解決策に期待もあったが、北朝鮮の核武装を今の段階で止めることは非常に難しいと思う。米軍の都合というより、国際情勢の変化によって、米軍の前方展開戦略を見直す時期も来たのではないか。ただ、日米合意は両政府が決めたことで、計画を見直すことは簡単なことではなく、日米トップの意思がなければできない」

 ―ネラー氏の発言からどんな影響が考えられるか。

 「日米両政府は今まで抑止力の観点から辺野古への移設計画を進めると主張してきたが、今後は危機管理、危機対応の議論がより必要だ。これまでも言われてきたが、万が一、朝鮮半島が有事になった場合、沖縄では遠すぎる。海兵隊の輸送揚陸艦は佐世保基地(長崎県)に、戦闘機や給油機の部隊は岩国基地(山口県)にある。九州で、米軍と自衛隊が共同使用できる場所を陸上に造ることが一番合理的だと思う。埋め立てでなく、既存施設も検討できる。もちろん地元は『来てほしい』と言わないだろうが、しっかり交渉して何らかの妥協を見いださなければならない。沖縄県民を納得させるより、早く実現できると思う」

 ―7月に日米両政府がトランプ政権下で初の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開く予定だ。

 「11年の2プラス2で馬毛島(鹿児島県)が陸上空母離着陸訓練の候補地に上がった。安倍晋三首相が地元の山口県の岩国基地で在沖海兵隊のオスプレイを引き受け、馬毛島も訓練に使用できるなら、すぐにでも解決できるだろう。トランプ政権はいろいろ問題があるが、新しい方法を考えようという提案に『いいね』という可能性もある」

 「官僚によって『辺野古が唯一』ということが定着しているが、その『神話』を壊すために、日米の安全保障専門家がさまざまな案を話し合う委員会をつくるべきだ。一番の問題は、あまりにも沖縄に基地が集中し不公平だということ。沖縄の負担軽減は、安全保障の大きな観点から考えなければ解決の道筋は見えない」

 「1995年からの大きな変化は、日米の防衛協力がますますシームレス(継ぎ目のない)の方向に動いていること。これだけ日本との防衛協力が進んでいることは、米国を説得するいい機会だ」

 「辺野古の工事は進んでいるが、まだ引き返せないところまでは来ていない。そこに近づく前に、新しい案の議論をしないといけない。知事と総理がその議論を始めるべきだと思う」