透き通る美しい笛の音が、儀間太久実さん(29)=大阪狭山市=の唇で奏でられた。4月に94歳で逝去した、沖縄を代表する版画家・絵本作家の儀間比呂志さんの孫に当たる太久実さんは、国内でも珍しいプロの“口笛奏者”だ。子どもの頃から努力を重ね、磨き続けてきたその技を、2日夜、那覇市内で開かれた儀間さんをしのぶ会で披露した。「千の風になって」などを口笛で奏で、会場を清涼な空気で包み込んだ。
儀間さんの自宅隣家で生まれ育った太久実さん。10歳の頃、2人の兄が吹く口笛を見て「人間の体から声ではなく、楽器のような音が出ることに衝撃を受けた」と話す。以来「授業中と眠る時以外は吹いていた」というほど口笛の練習に夢中になり、中学の頃には「口笛と言えば儀間」と言われるほどの“口笛キャラ”になっていた。
転機となったのは高3の時。中学時代の恩師が「第1回全日本口笛音楽コンクール」の開催を手紙で知らせてくれた。2006年の同大会で、太久実さんは見事、準グランプリに輝いた。07年にアメリカで開かれた国際口笛大会第34回インターナショナル・ウィラーズ・コンベンションで、ポピュラー、クラシック部門共に1位を獲得し、総合優勝を果たした。
15年にはCDアルバムをリリースし、今も各地でコンサートを開くなど、数少ないプロの口笛奏者として活動を続けている。
祖父である比呂志さんの創作活動を幼いころから間近に見てきた太久実さん。「分野は違えど芸術、創作活動をする立場になってみて初めて、祖父が向き合ってきた生みの苦しみを知った」と語る。祖父の残した作品の数や質の高さを目の当たりにし「執念と根気と努力で、伝えたい気持ちを形にしてきたことに尊敬の念を改めて感じている」と語った。
(佐藤ひろこ)