セブン-イレブン19年度沖縄進出 業界最大手の“黒船”到来で県内の流通、雇用はどうなる?経済効果は?


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翁長雄志知事と面談し、2019年度に沖縄に出店すると表明したセブン-イレブン・ジャパンの古屋一樹社長(左)=9日、県庁

 2019年度の沖縄進出を発表したセブン-イレブン・ジャパンの古屋一樹社長は「コンセプトは近くて便利。セブンができて便利になったと沖縄の人に言ってもらえる店をつくる」と語り、初出店から5年で250店舗を展開する計画とともにグローバル展開する拠点とすることも明らかにした。約2年後に迎える業界最大手の“黒船”到来は、コンビニ業界にとどまらない話題性と衝撃を広げている。

 セブン-イレブンは1日3回の店舗への商品供給、3時間以内の配送を基本に、総菜や弁当などの食品を自社だけに供給する専用工場と配送センターを整備している。古屋社長は「沖縄出店は10年前から話はあったものの、やはりサプライチェーン(原材料調達から製造、販売まで一貫した供給網)の問題があって遅れた。おいしい商品を新鮮に届けられる専用工場がないと、われわれは絶対に出店しない」と説明した。

 古屋社長は、沖縄に整備する専用工場の運営企業や建設場所について「未定」と具体的な言及は控えたものの「どうにか出店できる環境が整った。今までは公に地元の人と名刺交換もできなかったが、今日を機に具体的に開店準備が整えられる」と地元企業との協議や加盟店募集といった作業を本格化していく構えを見せた。

■現地法人を設立

 沖縄進出では、国内で初めて現地法人の子会社を設立する。増田彰常務執行役員人事本部長は「東京で管理するよりも、沖縄に根差した商品開発や出店を地元と一緒にやる方がいい。『隣人』ではなく『家族』になる」と述べ、特別な地域として重視していると強調した。

 ファミリーマートやローソンは、それぞれリウボウ、サンエーの地元小売企業が51%を出資する合弁会社を設立。その現地法人に地域運営を委ねる「エリアフランチャイズ(AFC)」方式を採用している。地元に影響力がある企業と組むAFCは、人的・物的な基盤のない地域の開拓を円滑に進める利点がある。セブンも地元企業と提携するか対応が注目されたが、古屋社長は「セブンは国内でエリアライセンスは取っていない」と合弁ではなく100%子会社で現地法人化した。

 既に飽和感もある県内のコンビニ市場に新規参入し、さらに5年で250店舗という出店計画は急速にも映るが、古屋社長は「同質化すると飽和だが、質を上げて圧倒的に差別化することで、昨年は国内で過去最高の出店を実現した」と自信を見せた。

■雇用や地産地消

 県庁での会見に先立って翁長雄志知事に面談した古屋社長は、7月下旬からセブン-イレブン全店舗で「ハイサイ沖縄フェア」を開催し、ゴーヤーを使った総菜や紅イモ、シークヮーサーのスイーツなどのオリジナル商品を全国販売することを報告した。沖縄進出に当たって、県との間で地域活性化の包括連携協定を交わしていく方針を伝え、「雇用や地産地消などの観点からも心強い」と翁長知事を喜ばせた。

 全国的にもセブン-イレブンは自治体と地域活性化包括連携協定を積極的に結び、自社の商品開発や全国の店舗ネットワークを使った特産品の販路開拓や防災への協力を推進している。コンビニをインフラ(社会資本)として捉える出店戦略で、公共施設や駅といった施設での店舗展開に強みを発揮している。

 さらに「セブンプレミアムを世界ブランドにしたい。沖縄からアジアがベスト」と語り、アジア市場にプライベートブランド(PB)商品を展開していく物流の拠点として沖縄を位置付けていることを説明。店舗展開だけでなく海外戦略による差別化で、沖縄の経済戦略にも貢献する相互利益のビジネスモデルを用意していく姿勢を強調した。(与那嶺松一郎)