軍事大国の行方 米国防総省、監査一度もなく 予算集中、強まる権限


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 2018米会計年度の国防予算案に関する連邦議会の審議が始まっている。国外の戦地での作戦経費も含め、約6390億ドル(約70兆円)の予算請求について、国防総省トップのマティス国防長官、制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長が公聴会に連日出席し、「米軍の再建」「戦闘への即応性強化」に向け、軍の現状や国際情勢について証言している。

 マティス国防長官は、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を「最も差し迫った危険な脅威」と強調。ロシア、中国の台頭、シリア、イラクでの「イスラム国」(IS)掃討、16年間続くアフガニスタンでの戦闘など、緊迫する国際情勢を次々と強調する証言から、米国が軍事力で世界各地に介入する姿を改めて見せ付けられる。そんな中で、沖縄の基地問題が取り上げられる機会は非常に少ない。

 一方、軍事委員会では、トランプ大統領が施政方針演説で歴史的規模の国防費増額をうたったにも関わらず、18年度予算は十分でなく、一層の国防予算充実を、という指摘も相次ぐ。

 だが、驚くことに、国防総省はこれまで一度も監査を受けたことがないという。ロイター通信は独自調査や米政府監査院(GAO)の報告書を基に、国防総省内に統一した会計システムがなく、正確なデータを共有できないため、膨大な国防予算の会計記録を確認できていないと指摘した。同省は、アフガニスタンでの軍事作戦で、海軍が16年第1四半期に8億6600万ドルもの予算をどう使ったか、記録を見つけることができなかったという。

 そんな中、トランプ米大統領は国防総省に対し、新たに数千人規模の米軍部隊をアフガニスタンに独断で派遣できる権限を付与した。外交や環境、教育への予算を減らす方針を示すトランプ大統領の下、世界一の軍事大国はどこへ向かおうとしているのか。重苦しい空気を感じている。
(座波幸代本紙特派員)