命のかけら受け継ぐ 映画「STAR SAND」 満島真之介に聞く


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
映画「スターサンド」が「人生のターニングポイントになった」という満島真之介=21日、那覇市の桜坂劇場

 伊江島でロケをし、非戦の心を描いた映画「STAR SAND(スターサンド)―星砂物語―」(ロジャー・パルバース監督)が21、22の両日、那覇市の桜坂劇場で先行上映された(8月から東京、神奈川で上映)。戦時中の沖縄を舞台に日米の脱走兵と少女の交流を描いている。脱走兵を演じた沖縄県出身俳優の満島真之介に映画や沖縄への思いを聞いた。

沖縄への恩返しが原動力

 ―作品が完成した心境は。

 「東京に出て10年目になるけど6月の沖縄の不思議な空気は忘れられない。この映画に出たことで、あの時(戦争の時代)があって僕らが存在しているんだと感じられた。沖縄に恩返しがしたいという思いが東京で仕事をする大きな原動力だ。慰霊の日の前に沖縄で先行上映できたことは、僕の人生でターニングポイントになると思う」

 「桜坂劇場に来たのはデビュー作『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』の上映で若松孝二監督と来て以来だ。戦時中に生まれた世代の方と仕事をする機会は少ないのに巡り会えた。若松監督、蜷川幸雄さん、大林宣彦監督、ロジャー監督から命のかけらをもらっていると思う。受け継がないといけない」

 ―姉の満島ひかりさんが奄美を舞台に島尾敏雄、ミホ夫妻を描いた映画「海辺の生と死」に出ている。奄美にルーツがあるそうだが。

 「おばあちゃんが奄美から沖縄に来ておじいちゃんと出会った。同じ時期に僕が戦時中の沖縄で生きた日本兵を演じて、姉はその時代の奄美の女性を演じるのは先祖に『お前たちが(当時の人の思いを)描いてくれ』と導かれている気がする」

 「沖縄出身の男性の役者が少ない中で女性に負けていられないと思う。でもひかりにライバル意識はない。ひかりが描けることと僕がやらなきゃいけないことは違う。2人で一つの円をつくりたい」

 ―脱走兵の隆康をどういう人物だと思って演じたか。

 「当時はみんな生きることへの葛藤を抱えていたと思う。時代の空気が隆康に詰まっている気がしたので、それを背負っていくしかなかった。伊江島の海やガマがパワーをくれた。隆康が1人で座って海を見ているシーンにあの時代を生きた全ての人の思いが詰まっている」

 ―今後は沖縄とどう関わりたいか。

 「おやじの世代、戦後に生まれて若い頃に日本復帰を経験した人たちを題材に映画をつくりたい。アメリカと日本のはざまにいた若者たちが、どう生きてきたかに向き合わないといけない」

 ―「スターサンド」をどう人々に届けていきたいか。

 「先行上映で沖縄の人が映画に命を吹き込んでくれる。そのパワーを持ち帰り、首都圏の人に『もう一度生きる意味を考えよう』と提示できたらいい。毎年この時期に上映できればうれしい。沖縄の人に力を貸してほしい」
(聞き手 伊佐尚記)