興南高校野球部監督で同校校長、興南学園の理事長を務める我喜屋優氏が復帰45年を機に語ったインタビュー記事が県内外で波紋を広げている。我喜屋氏は5月22日付の産経新聞で、「辺野古移設問題は、気持ちはいろいろありましょうが、決まったことには従わなければいけません」「地元の新聞記事は目を背けたくなる」などと述べていた。発言の真意や沖縄政治への考えなどを聞いた。(聞き手・吉田健一)
―名護市辺野古への新基地建設について、「決まったことには従わなければいけない」と語っているが、真意は。新基地建設についてどう考えているか。
「スポーツでの一般論を語っただけだ。何をするにもルールやマナーがあり、配慮しなければならない。配慮がないと単なる闘い、戦争になる。それが大嫌いだと話したら、『最高裁判決に従え』となった。新基地建設は国と国の問題だ。辺野古問題を含む基地問題は大変だと思うし、抗議行動する(市民の)気持ちも分かる。ただ、誹謗(ひぼう)中傷からは何も生まれない。どんな相手でも敬意を示せば動かないものも動く。(機動隊員らにも)子どもや奥さんもいる。誹謗中傷は絶対に駄目だ」
―新基地建設を巡って国と県の対立が深まっている状況をどう見ているか。
「対立する状況は客観的にも主体的にもいい気持ちではない。どうにかして解決してほしいが、私の力では解決できない。私はスポーツの人間だ。ただ、与野党に関係なく政治家が本当にあるべき姿を話し合うべきだ。必ずどこかに妥協点がある。辺野古の海は思い入れがある。また(出身地の)玉城も開発により魚が減った。経済発展の裏には、自然が壊され、悲しいこともある。辺野古に限らず、沖縄は自然が相当壊されてきた」
―新基地建設については。
「私は全体的なことは言うが、ピンポイントでは言わない。ただ、かたくなに抵抗しても無駄だとしたら、政治家が『金と土地』を用意するから離れた所、たとえは悪いが避難場所、新しい分譲地を用意するからそこで暮らさないかとか金も用意する配慮も必要だ。(新基地が)できた場合は、早く(沖縄側に)返してくれと要求すべきだ。離島対策や教育の場として提供できるよう、例えば15年後には返してくれと。そういった交渉力がある政治家がいればいいと思う」
―かつて稲嶺恵一元知事の公約に基づき政府は「軍民共用、15年の使用期限」案を閣議決定したが、後に廃止された。そして、普天間飛行場は返還合意から20年がたっても使用されている。
「交渉力のある人が『約束したぞ』と世界に発信すべきだった。私はスポーツと教育の枠から提言している。沖縄経済が発展して自立型になってほしい。ただ、経済が発展し過ぎると『守礼の邦』沖縄がなくなる。それを今取り戻している。今、子どもたちは自分で物事を考えようとしない。思考力が低下している」
―沖縄の地元紙は見るに堪えないとの発言の真意は。そして、沖縄のメディアに求めたいことは。
「(辺野古や高江で機動隊と市民が)取っ組み合いするような記事を見た時に子どもたちがどう思うかということだ。その意味で違和感を覚える時はある。『ルールやマナーを守り、人格と人格の交渉が必要』と、新聞が指導してほしい。また、新聞が色を出すのはいいと思う。ただ、相手(機動隊員ら)の家族を不幸にしてはいけない」
―来年冬の知事選を控え、我喜屋氏の待望論も聞こえる。知事選に出馬する可能性は。
「(私の仕事は)教育、スポーツを通して沖縄を幸せにすることだ。かつては同情された内地に対して反骨精神を持って、日本を超え、沖縄を見本にすることに100%のエネルギーを使わせてほしい。期待されるのは悪くないが、教育、スポーツを通しての我喜屋を県民のために使ってほしい。政治となると敵味方あり、また誹謗中傷もある」