くらし

〈くらし深掘り〉注目の「テレワーク」 場所と時間、柔軟に働く

 「テレワーク」という言葉を知っていますか? 場所や時間にとらわれない「柔軟な働き方」として注目され、ワークライフバランスの実現や介護・育児をしながら働けるという利点があるといいます。現状の生活スタイルを見直し、どううまく取り入れることができるのか、考えてみました。


ICTの活用がポイント


 テレワークは「遠く離れた」という意味のteleとwork(働く)を合わせた言葉で、インターネットなど情報通信技術(ICT)を活用して場所や時間を選べる働き方を表す。政府が働き方改革の一環として企業への導入を奨励しており、2020年東京五輪の開会式に当たる7月24日を今年から「テレワーク・デー」と位置付けて浸透を図るなどしている。

 テレワークは職場に出勤したり外出先から戻ったりする必要がなく、自宅やカフェ、移動中にも仕事ができる。育児や介護による離職を防ぐほか、通勤時間の削減、職場スペースの削減、ペーパーレスに伴う業務効率化、ワークライフバランスの向上などがメリットとされている。

 移住者など地方の雇用創出も期待され、沖縄でも竹富町で15年から在宅勤務テレワーク導入の取り組みが行われてきた。

 ただし、総務省「16年通信利用動向調査」では、全国でテレワークを導入した、または具体的な導入予定がある企業は16・6%にとどまった。労働時間の把握や評価制度、従業員同士の意思疎通、通信インフラの整備などが課題と考える企業が多く、一方の労働者側にも“サービス残業”につながるとの懸念がある。

 導入の前提として労働管理方法などルールづくりに加え、「就業時間」や「顔を合わせての会議」という根付いた感覚の転換も必要といえそうだ。
 

ゆとりある環境で効率アップ 実践者 普久原朝親さん

 明るい光が差し込むリビングで、ノートパソコンに向かう。読谷村に暮らす普久原朝親さん(41)はテレワークを実践している一人だ。IT大手の日本マイクロソフト(MS)で10年以上採用業務を担当。昨年8月に東京から地元沖縄へ移り住み、現在は主に自宅で仕事をしている。
 


自宅で仕事をする普久原朝親さん=読谷村座喜味

普久原さんの平均的な働き方(クリックで拡大)

 業務時間や時間配分は自分で決める。会議や打ち合わせ、採用候補者との面談ではインターネット電話「スカイプ」を活用し、大人数とのビデオ会議や、モニターに資料を映しながらのやりとりもスムーズに行う。ネット上でデータを保存したり情報処理したりする「クラウド」を使えばファイルの共有も容易だ。

 MSでは2007年から在宅勤務を導入しており、16年には在宅に限らないテレワークに制度を進化させて最大週5日まで取得可能に。普久原さんは率先してこの制度を利用した形だ。これまでテレワークは育児や介護などある局面を助けるイメージが一般的だった。ワークライフバランスや経営効率の向上という観点も含め、「『いつでも、どこでも、誰とでもつながることができる』がキーワード。一歩進んだ段階に来ている」と普久原さん。自身、東京時代に比べてリラックスした環境で効率が上がったと実感している。

 こつは「オーバーワークしないこと」。集中し過ぎるあまり切り上げ時が分からなくなっては本末転倒。優先順位をつけ、ゆとりを楽しむことも大事という。

 普久原さんはスポーツ事故による頸椎(けいつい)損傷で15歳から車いす生活を送っており、テレワークは「障がい者にとっても幅が広がる」という。他にも交通渋滞の緩和や、コールセンターでの活用など、県内でも有効性が考えられるが導入に踏み切る企業は少ない。普久原さんは「沖縄から変えていきたい」と広がりに期待を込める。
 


記者が検証 集中力向上、働き方のヒントに

 記者(34)もテレワークを3日間実行し、効果を検証してみた。

 まず上司や同僚にテレワークの実施日と時間帯を事前に伝えてスタート。午前中または取材などで外出したついでに、自宅を除く社外で2時間程度仕事をすることとした。
 




 一番感じた利点は集中力が高まることだ。会社にいると情報提供や取材依頼、問い合わせなどの電話が頻繁に鳴り、集中が切れることが多い。同僚との雑談で仕事が止まったり、細かな会議が入ったりすることもあるが、外だとそれがない。

 ファストフード店、カフェ、図書館と場所を変えたが、無線LANの携帯型ルーターがあるのでネット環境には不自由しなかった。カフェ「ワンオアエイト」では朝食サービスを堪能して仕事に取りかかれたし、「那覇ラーニングスタジオ」では静かな自習室と開放的なラウンジを使い分けたり、フリードリンクを利用したりして気分転換できた。

 一方で、アポ取りや遠方の相手への取材などで電話を使う場合は、会社の方が落ち着いてできた。突発的なニュースが発生すれば同僚との連携が必要で、その際は対面の方が意思疎通が速い。自宅外だと飲食代など経費の負担も気になる。

 「記者は既にテレワークみたいな働き方をしている」。先輩記者からはそんな声もあった。確かに出先で原稿を執筆することは多いが、制度として認められていなければ効果的とはいえないだろう。きちんと成果を出せば勤務時間にはこだわらない、目に入る範囲でなくとも評価はできる、と発想を転換すること。そして多様な働き方からヒントを得て、取り入れられる部分から始めることが働き方改革につながると感じた。


文・大城周子、新垣梨沙 デザイン・仲本文子



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