心突き刺す笑いと切なさ 力合わせ「カビ人間」熱演 現代演劇協会


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カビ人間(奥・与那嶺圭一)が力尽きようとする中、伝説の剣で奇跡を起こそうとするおさえ(手前・大山瑠紗)=9日、沖縄市民小劇場あしびなー

 沖縄現代演劇協会(真栄平仁理事長)は8、9の両日、沖縄市民小劇場あしびなーで第5回公演「ダブリンの鐘つきカビ人間」(後藤ひろひと作、田原雅之演出)を開催した。大掛かりな舞台美術や多くの役者を必要とする作品だが、各劇団の役者が力を合わせて上演した。主な役に若手が起用され、笑いと切なさが入り交じったラブストーリーを好演した。

 粗筋は深い霧に迷った聡(金城太志)と真奈美(ナツコ)がある老人(田原)と出会う。老人は昔、周辺に自分が市長を務めた街があったことを語りだし、聡と真奈美も昔話の世界に入り込む。街では奇病が流行し、王(あったゆういち)は病を収束させるために奇跡を起こす伝説の剣を探しに行く者を募った。

 主人公のカビ人間(与那嶺圭一)は病気で心は美しくなったが、体にカビが生えて人々に嫌われている。ヒロインのおさえ(当間正子、大山瑠紗のダブルキャスト)は思っていることと反対の言葉が出る病気だ。カビ人間が近づくと「来て! 触って!」と叫び、勘違いしたカビ人間はおさえを好きになる。少し切ない笑いで観客を引き付けた。

 伝説の剣を探しに行く戦士(嘉手納良智)が筒状の変な「馬」に乗っているなど、ところどころにシュールな笑いも盛り込んだ。

 次第にカビ人間の優しさに引かれていくおさえ。だが、カビ人間はシスター(犬養憲子)によって、教会に放火した無実の罪をなすりつけられる。人々がカビ人間を殺そうとするのを止めたいのに、「殺して!」としか叫べないおさえが涙を誘った。

 戦士は伝説の剣を手に入れ帰還するが、千人斬らないと奇跡は起こらない。街を救うことが自分とカビ人間の幸せだと信じるおさえは千人目として自分に剣を突き立てる。「奇跡なんかくそくらえ!」というおさえの言葉が心に刺さった。

 協会は現在、五つの劇団と10人の個人会員が所属している。今回はオーディションを実施し、協会に所属していない劇団の役者も出演した。若手の劇団も増え、一昔前より県内の演劇は盛んになっているという。演劇人が連携し、県内の演劇を向上させていく場として協会がより存在感を発揮していくことが期待される。(伊佐尚記)