美来工科―興南 夏の甲子園沖縄大会 きょう決勝


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 甲子園出場を懸けた第99回全国高校野球選手権沖縄大会第10日は15日、沖縄セルラースタジアム那覇で準決勝を行い、第4シードの興南は糸満を2-0で下し2年ぶり19度目、第3シードの美来工科は八重山農林に8-0で七回コールド勝ちし、前身の中部工業時以来、38年ぶり2度目の決勝進出を決めた。決勝は16日午後1時、同スタジアムで行われる。堅実な野球を得意とする興南は小技と機動力が強みの糸満と対決。投手戦の中の五回、四球や捕逸などを逃さず2点を奪うと、先発川満大翔らの好投で糸満を振り切った。美来工科は初回から八重山農林の投手陣を捕まえた。四回には代打の玉城幸人の満塁本塁打などもあり、打線に勢いが出た。その後も得点を重ねて圧勝した。

◇美来工科 打線が爆発 玉城、代打で満塁弾

八重山農林―美来工科 4回裏美来工科1死満塁の好機に、左翼へ本塁打を放つ代打の玉城幸人=沖縄セルラースタジアム那覇(又吉康秀撮影)

 1―0の四回1死満塁で代打出場した美来工科の玉城幸人が、ひと振りで相手の戦意を奪った。甘く入ってきたストレートだった。「メンバーに入れなかった3年生の分も絶対に打とう」と、捉えた初球が左翼方向へ伸びる。走者一掃のスタンドイン。一気に4点を加える一発に応援団から大歓声が響き渡った。

 今大会2発目が満塁本塁打となった。166センチと小柄ながら、中軸3人が埋めた塁を一掃した。「最高でした」と最大級の仕事を果たし、白い歯をこぼす殊勲者。美来工科の打撃力の高さを見せつける控え選手の一発だった。

 玉城のほか、先発陣も奮起した。初回に先制の適時二塁打を決めた3番山川倫輝は、四回の2打席目に単打、五回の3打席目は三塁打を放ち好機を演出した。続く山内慧がチーム6点目となる適時二塁打を放ってリードを広げた。

 六回2死二、三塁から「ここ2試合打てていなかった。力を抜いて自分の野球をしよう」と2番神山諒介が内角高めの直球を捉え、2点適時打で8点目を奪った。

 今大会初の沖縄セルラースタジアム那覇のマウンドになじめず、制球に苦しんだ山内を打撃で援護した。五回から登板した比嘉太陽も持ち味の打たせて取る投球で好投し、飛球での凡打を重ねた。

 マウンド感覚の修正を急ぐエース山内は「自分の投げたいい球も覚えている。初回から飛ばしていきたい」と述べ、16日の決戦へ向け、エースの責任感をにじませた。(崎原有希)

◇興南、投手戦制す 川満快投 10奪三振

糸満―興南 10奪三振の興南のエース・川満大翔=15日、セルラースタジアム那覇(具志堅千恵子撮影)

 180センチの長身から角度ある投球を振り込むと、何度もバットは空を切った。昨秋の腰のけがから復帰し、興南の川満大翔が今大会最高の九回途中まで投げて10奪三振と好投。毎回走者を出すも、守備一体で本塁を守り抜いた。我喜屋優監督は「試合ごとに成長して簡単に崩れなかった」と及第点を付けた。

 0―0の四回には連打を浴びて1死一、三塁とされ、この試合初めて三塁に走者を背負った。「ここを抑えないと勝てない」。緊迫感が高まる中で初球、全力で低めの真っすぐを投げ込む。スクイズを仕掛けた糸満だったが、打者のバットはボールを捉えず、本塁に駆け込んだ走者は三本間で挟殺。2死二塁へと変わった場面では三振で切り抜けた。捕手の渡辺健貴は「足を使う糸満に対し、変化球や真っすぐを投げ分けてくれた」と振り返る。

 守備から勢いに乗った興南は五回、先頭が四球で出塁し、犠打や安打で1死一、三塁と好機を広げる。捕逸の間に1点を先制した後、8番里魁斗の右前適時打で2点目を奪った。

 九回1死、川満の左手中指はつり、高めに浮いて四球になる。間髪を入れず、宮城大弥を送った指揮官。宮城は2死一、二塁から打者に粘られたものの、最後はこの日最速の141キロの直球で三振に締めた。

 2年前の決勝戦と同じ顔合わせとなった対決を制し、甲子園へ王手を掛けた。「決勝だからと気負わず、マウンドに立てたらキャッチャーやバックを信じて投げたい」。川満は完投できなかった悔しさを決勝でぶつける。(崎原有希)

◇きのうの結果

▽準決勝
興南2―0糸満
美来工科8―0八重山農林
(七回コールド)
 

◇16日の試合

▽決勝
【セルスタ】13時
興南―美来工科