変化球は振らずに直球に絞る作戦が的中した。興南は最速143キロの相手エースを徹底攻略し、序盤から打線が爆発。三回までに13点を奪い、エースと2番手を一気に崩した。それでも「美来工科から何点取っても安心できない」(福元信馬主将)と手を緩めずに、さらに2得点。四回と七回の1点は優勝に懸ける興南ナインの気持ちの象徴だった。
前日の準決勝終了後、相手投手の特徴を再確認した。打撃マシンは140キロ後半に設定し、練習に打ち込んだ。美来工科の試合も動画で研究。ボール球になる確率が高い変化球は振らず、決めに来る直球に狙いを定めた。全体練習後も個々が納得するまで振り込んだ。
この直前の練習が奏功。決め球の直球に振り負けず、安打を量産した。それまでの引っ張る打撃から、球に逆らわず右方向へ打ち返す打撃に意識を変えたことで、3安打3打点につなげた嘉数尊は「真っすぐだけ振る作戦が大量得点につながった」とうなずいた。
決勝で敗れた昨秋大会、10―17の乱打戦の末敗れた春季大会の3位決定戦と、美来工科の前に悔しさを味わった。苦しく地道な練習を積み重ね、2年ぶりの甲子園切符をつかみ取った。福元は「県代表の誇りを持って戦いたい」と腕をまくった。(崎原有希)