国家戦略特区の活用、沖縄は低調 国際観光拠点、事業メニューとニーズ合わず?


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り耳目を集める国家戦略特区。地域限定で「岩盤」という規制を打ち破り経済成長の起爆剤とする安倍政権肝いりの政策だが、沖縄県は2014年に「国際観光拠点」として特区指定後、規制改革メニューを活用した事業数が4件にとどまり、特区の諮問会議などでは指定取り消しをちらつかせる発言も出ている。メニューに沿った事業提案を迫られる県側はニーズの洗い出しに苦心する。

 政府は14年3月に沖縄県のほか東京圏や関西圏、新潟市など6カ所を特区に認定した。その後2回の追加で現在は全国10地域に特区がある。17年5月現在、特区の規制改革メニューを活用した事業は東京圏が80件と最も多く、沖縄は道路法特例で多言語観光案内板を設置する事業や地域限定保育士試験実施など4件しかない。

 5月の特区に関する区域会議で10地域の事業の進捗(しんちょく)に関する評価があったが、沖縄県のみが評価すべき点は「特になし」とされ、本年度中の中間評価までに成果を出すよう指摘された。安倍晋三首相は同月の諮問会議で「メニューの活用が進まない地域は、特区指定を維持し続けることが難しくなるとの危機意識を持ってメリットを生かしていただきたい」と厳しい目を向けた。

 従来の特区制度で地域が手を上げ規制緩和を要望し、政府がその可否を判断してきたの対し、国家戦略特区は政府があらかじめ用意した規制改革メニューに沿った事業提案を地域に求めるトップダウン型の仕組みだ。そのため「上から何か適用できるものはないかとつつかれる。手を上げる人がいるかどうかが課題になる」(県幹部)。

 適用実績の少なさを指摘された県は県内市町村にもニーズの掘り起こしを呼び掛けるなど、事業提案につなげる取り組みを模索している。これまで専門学校を卒業した外国人の在留資格緩和や、外国人労働者の農業就労受け入れを目指す動きが出ている。