病気や重い障がいのある子どもたちと家族に医療者が付き添って開くサマーキャンプが、14年前から沖縄県内で続いている。病児だけでなく、きょうだい児や保護者向けのイベントも企画され、この日は家族全員が「主人公」になる。キャンプへの参加を励みに1年を過ごす保護者も多く、そろって外出する機会の少ない家族が、夏の思い出をつくる貴重な場になっている。(新垣梨沙)
「サマーキャンプがんばれ共和国inおーきな輪」は、県内の医療従事者らでつくる小児在宅医療基金「てぃんさぐの会」とNPO難病のこども支援全国ネットワークが共催して2004年から始まった。
14回目のことしは8日から10日まで、恩納村のみゆきハマバルリゾートで開かれ、県外と宮古島からそれぞれ3組の親子を含む家族29組とボランティアら計200人が参加した。今年は「日本財団トゥース フェアリー」の支援で、家族の参加経費を抑えることができた。
1年に1度の海水浴
キャンプには痰(たん)の吸引や人工呼吸器、鼻や胃から栄養を注入する経管栄養など医療的ケアが必要な病児のいる家族が参加する。普段は、全員そろって外出することが難しいが、キャンプでは、医療者や介護者らが終始付き添って安全面に配慮している。
8日は多くの家族が朝から海水浴を楽しんだ。医師や看護師らが付き添う中、病児はエアマットやヌードルと呼ばれる丸い棒状の浮具に乗って海中を移動し、波をかぶってリラックスした表情を見せた。
肢体不自由で経管栄養などが必要な恒吉彩花さん(17)の母香さん(37)は「彩花を海に入れてあげられるのは、キャンプの時だけ。先生たちが付いていてくれるので助かっている。毎回、この日に合わせて彩花の体調を整えている」と話す。
悩み共有、情報交換も
きょうだい児や保護者も主人公となるのがサマーキャンプの特徴だ。きょうだい児は「キッズ団」を結成し、スタッフの案内で森を散策したり、プールで泳いだりして病児や保護者と別行動を取る。
二度目の参加となる伊波杏梨ちゃん(2)の姉優梨乃さん(9)は「森を探検したり自転車に乗ったりして楽しかった。妹がいたから、キャンプに来られて新しい友達もできた。来年も来たい」と声を弾ませる。
母の江梨子さん(39)は、キャンプへの参加が、新たな目標を見いだすきっかけになったと語る。「毎日、杏梨と生きるのに精いっぱいだったけれど、昨年キャンプに参加して『次も絶対に来る』という目標が初めてできた。1年間この日を励みに頑張ってきた」と口にする。
毎回、夜は保護者とスタッフによる懇親会が開かれる。病児の入浴や就寝にスタッフが付き添うことで、保護者もいっときの間、育児から離れて、自分だけの時間を過ごすことができる。
14年参加している新垣八枝乃(やえの)さん(22)の父隆顕(たかあき)さん(58)は「毎年家族で参加を楽しみにしている。懇親会でお互いの悩みを話し合い、情報交換ができてとても助かっている」と目を細めた。
「てぃんさぐの会」では、10月に、病児と家族の災害時の対応について考えるピクニックを予定している。問い合わせは事務局のkukuru(電話)098(859)8768。