ヒアリ防除、沖縄は研究者連携で 迅速調査、知見を共有 科学技術大学院大や琉球大など


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外来アリ類の有無を確認する調査=4日、那覇市の那覇港新港ふ頭

 地域の生態系を保ちつつ南米原産の強毒アリ「ヒアリ」を防除するため、沖縄科学技術大学院大(OIST)や琉球大のアリ研究者を中心に沖縄県内の関係者が連携を深めている。世界的な研究知見を関係機関が迅速に共有して方向性を一致させており、関係者は「全国に類がない」と胸を張る。

 ヒアリ対応に全国的に混乱が見られる中、環境省那覇自然環境事務所や那覇港管理組合、OISTなど県内関係者は13日に緊急会合を開き、ヒアリを監視する今後の方向性や具体的な方法を議論した。これを実践する形で19、21の両日には那覇港の国際コンテナバースで関係者が自主的に集まって綿密な調査を展開。ヒアリの不在を再確認した。

 きっかけは国土交通省が12日に出した要請だ。早急な防除対策として那覇、平良、石垣を含む全国68港湾管理者に殺虫餌の設置と分布調査の実施を求めた。ただ具体的な方法は示されておらず「沖縄としてどうするか関係者で話し合いたかった」と環境省那覇自然環境事務所の小野宏治さん。

 県の対策事業を受託するアリ研究者でOIST研究員の吉村正志さんは「沖縄にヒアリは出ていないし、殺虫餌を置けばヒアリ以外の昆虫にも影響する」として「沖縄は殺虫餌を置かなくても大丈夫だと説得できる体制を作る必要があった」と力を込める。

 琉球大農学部の辻和希教授は、以前からアメリカでヒアリの生息環境などを研究している。ヒアリの生態や効果的な捕獲方法は熟知しており「県内調査にもすぐに応用できた」。ヒアリが入る可能性の高い那覇港のバースを埋め尽くすよう20メートル四方の調査枠を510カ所設定し、それぞれに誘引剤を置いてアリを確認する調査計画を練った。

 迎えた調査初日の19日には琉球大、OISTのほか那覇港管理組合などから約40人が集まった。アリの種類を見分けられるメンバー1人を含む3人一組で12チームを結成。西日でうだるような暑さにもかかわらず、しらみつぶしの調査は予想以上に早く進み、21日にはさらに詳しい調査で不在を確認した。

 環境省那覇自然環境事務所の小野さんは「アリ研究者に恵まれた沖縄のモニタリングは質量ともに全国一。これからもしっかり監視していく」と話した。