沖縄の負担 放置懸念 米、在沖基地を重視 対北朝鮮 議論には「最悪の時期」


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北朝鮮への対抗措置や、アジアの安全保障における米軍の重要性を強調するハリス太平洋軍司令官=27日、米ワシントン

 ミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮に対抗し、米トランプ政権は日米同盟の深化やアジア太平洋地域での米軍の存在を一層強調している。国防総省や米軍関係者は北朝鮮をはじめ、中国の台頭に対し、米軍と自衛隊との共同演習や日米韓の軍事協力でけん制。在沖米軍基地の「意義」を強調する一方、名護市辺野古への新基地建設計画を巡る県と日本政府の対立や沖縄の負担軽減について「今は議論するには最悪の時期」(米政府関係者)という見方もあり、沖縄の基地問題が置き去りにされる懸念が強まっている。

「軍事的選択肢」

 「この1年間でアジア太平洋地域における安全保障環境は大きく変化した」。米太平洋軍のハリス司令官は27日、米ワシントンでの講演で語気を強めた。

 北朝鮮の核・ミサイル開発をはじめ、中国の挑発的な軍事行動、フィリピンでの過激派組織「イスラム国」(IS)拡大への懸念を強調。北朝鮮に対し、平和的に非核化するのが望ましいとする一方、「今後も軍事的選択肢を大統領に提供し続ける」と述べた。

 制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長もコロラド州であったフォーラムで「在韓米軍や韓国、日本という同盟国、沖縄やグアム、米本土の米軍は北朝鮮のミサイル攻撃に対して防衛する能力を持っている」と説明。太平洋軍幹部は「北朝鮮の脅威が増す中、沖縄の海兵隊はますます重要な役割を持つ」と胸を張る。

駐日大使就任の宣誓式で、ペンス副大統領(右)、クリッシー夫人(左)に囲まれ宣誓するハガティ氏=27日、米ワシントン

「認識」に溝

 「米国は、同盟国の日本に強固に関与していく。その象徴が、大統領によるハガティ氏の指名だ」「日米は共に北朝鮮の脅威に断固立ち向かう」。ペンス副大統領は大使就任宣誓式で、新駐日米大使となるウイリアム・ハガティ氏を激励し、北朝鮮への対応が大使の最重要課題だと強調した。

 そのハガティ氏は28日の記者会見で、本紙の質問に対し「沖縄にはぜひ訪問したい」と米軍基地問題に配慮する姿勢を見せた一方、県知事と面会するかどうかなどの言及を避け、慎重な態度に終始した。

 5月の上院外交委員会の公聴会では、カーディン筆頭委員(民主)から「沖縄と日本政府との政治的課題は厳しさを増している。この問題をどう進めるか」と問われたハガティ氏は、「ゆっくりだが(辺野古新基地建設の)工事は始まった。沖縄はわれわれの基地の周辺で発展してきた」と、沖縄に対する誤った認識も露呈。ビジネスの世界から、トランプ大統領の政権移行チームに起用された同氏の外交手腕は未知数だ。

 大統領の国務省への予算削減の方針で同省の力が弱まっているとの指摘もある中、このままでは、沖縄の基地問題は軍事力の増強を前面に強調する国防総省主導の政策や国際情勢に振り回される結果に陥りかねない。