がんで亡くなった元高校野球マネジャーの思い、natchyが歌う


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「夏海さんの思いを多くの人に伝えたい」と語るnatchy=那覇市の琉球新報社

 沖縄市出身の歌手natchy(なっちぃ)が7月7日に2枚目のシングル「逆転ホームラン」(SEVEN SEAS RECORDS)を発売した。伸びやかな声で力強く歌っているこの歌は、2014年2月、血液のがんで亡くなった中部商業高校の元野球部マネジャー儀間夏海(なつみ)さん(享年19)が書いた歌詞にnatchyが作曲した。自身も血管炎という病気と向き合うnatchyは「夏海さんの思いをこのCDで多くの人に伝えたい」と前を見据えた。

 natchyは中学2年だった11年にCDデビューし、第5回世界のウチナーンチュ大会でテーマソング「ニライの彼方(かなた)」を歌った。6年間でアルバム4枚、シングル2枚を出し、キー局のテレビに出演するなど県内外で活躍している。

 デビュー翌年の12年夏、急に関節が痛くなった。「意識朦朧(もうろう)としながら手首や足首がだんだん腫れていき、体重も減っていった」と当時を振り返る。病院で数多くの検査を受けた結果、医師から血管炎と告げられた。「どんな病気か分からない中、将来どうなってしまうのか不安でたまらなかった」

 血管炎は全身の血管にさまざまな炎症を引き起こす自己免疫疾患で、完治が難しい病気。入院生活では痛みを耐えながらの治療だった。「つらくて、歌うことさえ厳しく何度も挫折しようとした。でも母やアーティスト仲間が励ましてくれて、ファンの人たちからも『いつまでも待っているから』と応援してくれた。それで歌を続けようと励みになった」

 14年、所属事務所から「取り急ぎ曲を作ってくれ」と依頼を受け、儀間さんの日記と高校球児たちに向けてつづった歌詞が届いた。日記には、歌手を夢見た儀間さんの日々の闘病生活が刻まれていた。「涙が止まらなかった。夏海さんはくじけそうになりながらも、強くたくましく生きていた。一緒に仕上げようねと、心の中で伝え、ギターを爪弾きながら1日でできた」。完成した「逆転ホームラン」はその後琉球朝日放送の「速報!!めざせ甲子園!」のエンディングテーマとなった。

 今年春、natchyは突発性難聴にもなった。病気の影響で直射日光も避けなければならなくなった。そんな中、カップリング曲の「この身に」を作詞作曲。「痛み」「悲しみ」「愛」などの言葉が並べた歌詞には、支えてくれた人に対するnatchyの気持ちが読み取れる。

 入院中に外出許可を得てレコーディングし、20歳の誕生日となる7月7日の発売が実現した。「夏海さんの歌詞と出合ったことで逃げずに病気と向き合ってきた。今度は私が多くの人に元気を与えるような歌を作っていきたい」と笑顔で語った。

 「逆転ホームラン」は税込み1500円。(金城実倫)

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