沖国大の思い 世界へ 多言語でHP発信


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖国大が13日に発信する8言語に訳した「学長声明」

 「世界中の人々に知ってほしい。民衆こそが政府を動かす」-。米軍ヘリが墜落した8月13日に毎年「学長声明」を出す沖縄国際大は今年、声明を8言語に翻訳して同大のホームページで世界に発信する。普天間基地の閉鎖と安全・安心・平和を求める内容の声明を例年、日米両政府に送付しているが「なしのつぶて」(小柳正弘副学長)。思いを引き継ぎつつ、事態を動かし新しい動きを創り出そうと、大学の総合力を発揮した。

 発信する言語は日英に加えて大学内に専門の教員がいるうちなーぐち、中国語の簡体と繁体、韓国語、ドイツ語、フランス語の8言語。原文を忠実に訳しながら「ドイツでは沖縄自体知らない人が多いので場所の説明から記した」(ドイツ語の岡野薫講師)、「英語圏の人に『低周波』は分からない」(英語の素民喜(すみんき)琢磨(たくま)教授)など各地の文化に照らして言葉を補い、かみ砕いた。

 うちなーぐち担当の西岡敏教授は、学生の安否確認を急ぎ、米軍に規制され学内に入れなかった当時を振り返りながら「沖縄で暮らす人々の思いをくみ取った」と話す。声明に記述がある、うるま市で起きた米軍属女性暴行殺人事件は、監修者に意見をもらい「肝苦(ちむぐ)りさ」よりさらに強い「肝(ちむ)ん肝(ちむ)ならん」との表現になったと言う。

 墜落から13年。学生はすっかり入れ替わり、教員も学科によっては事故後に赴任した人が半数を占める。13日開催の「普天間基地の閉鎖を求め、平和の尊さを語りつぐ集い」を担当する小柳副学長自身も当時を知らず、模索する中で立ち返ったのが建学の精神だった。「『真の自由と、自治の確立』は、沖縄の社会に欠けている。その延長上にヘリ墜落事故がある。改善どころかひどくなっている状況にある沖縄の“思い”を伝えたい」と語った。(黒田華)