低体重児や先天性の病気を持った重症出生児に対して、専門的な医療を24時間体制で提供する新生児集中治療室(NICU)が、7月から満床の状態が本島中南部の医療機関で続いている。沖縄県は満床を受け、早産予防を呼び掛ける文書をこのほど出した。医療関係者によると、病床が足りずに一般病床でやりくりしている医療機関もあるという。沖縄は全国で最も低体重児が生まれる割合が高い上、病床が足りなくても離島県のため他県への搬送も難しく、限られた医療体制の下で対処せざるを得ない悩みも抱えている。
県内にはNICUを運営する「地域周産期母子センター」が那覇市立病院、沖縄赤十字病院、琉大病院、県立北部・宮古・八重山病院の6カ所ある。さらにより重症な出生児に対処する「総合周産期母子センター」は、県立南部医療センター・子ども医療センターと中部病院の2カ所。合わせて60床整備されている。
厚労省は出生児1万人当たり25~30床のNICUが必要と指針で示しており、県内の必要な病床数は約50床だ。
指針を上回る病床数があるものの、県立南部医療センター・こども医療センターの宮城雅也母子センター長は「宮古、八重山、北部も合わせると足りているかもしれないが、人口が多い中南部では病床数が不足している」と指摘する。
また、県立中部病院周産期母子センターの小濱守安センター長は「NICUは産科と連動している。産科医も不足している中で、医師らは身を粉にして働いている。十分なマンパワーとベッドを確保し、長期的な展望に立って(出生児を)育てられる環境をつくることが必要だ」と強調した。
受け入れ困難も
県は今月4日、NICUの満床が続いていることを受け「医療者も最大限努力しているが、現在の状況(満床状態)がこれ以上続くと県内で未熟児を受け入れることが困難になる」として、早産予防を呼び掛ける文書を出した。県の文書によると、背景には妊娠中期(22~27週)に早産する妊婦が最近増加し、出生児の体重が1000グラム未満の超低出生体重児が増えている。
また県によると2015年の県内の低体重児の割合は10・9%と、全国平均の9・5%を1・4ポイント上回り、割合では全国で最も低体重児が多く、過去10年全国平均を上回っている。県は妊婦検診の受診や十分な休息をとること、おなかの張りや痛み、出血や破水などがあればすぐにかかりつけ医師に相談することを呼び掛けている。
早期検診を
「満床でも、受け入れないといけないが、現在は圧倒的に病床が足りていない状況だ」。周産期母子センターの医師の1人は、こう窮状を訴える。最近目立つのは妊婦検診を受けずに早産になったり、心疾患などの重症な病気を抱えて生まれたりする子どもが多いという。
重症な症例が増えているため、NICUへの入院期間が長くなり、病床の回転率の低下にも影響しているという。
同医師は「中長期的には病床を増やすことが必要だが、公費で妊婦検診が受けられることを知らない人もいる。早産を防ぐためにも、妊娠と気付いたら早めに検診を受けてほしい」と訴えた。(池田哲平)