「はいたいコラム」 家畜と仲良しの国モンゴル


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 島んちゅの皆さん、はいたい~! 夏休み、いかがお過ごしですか? 私はモンゴル旅行に向けて、ドキドキしながら大慌てでこのコラムを書いています。皆さんが読んでくださるころは、北緯47度、高度2千メートルのウランバートル北部、アルハンガイでゲル(遊牧民の移動式住居)に泊まっているでしょう~! 旅のテーマは遊牧民の乳文化。人と家畜の歴史1万年をたどります。何とモンゴルは世界一乳製品が豊富なんですって。家畜も羊、ヤギ、牛、馬、ラクダ、ヤクなどがいて、人が多様な生き物と共生している暮らしが今なお続いています。ちなみに人口密度の低さも世界一!

 私がモンゴルに興味を持ったのは1年前、牧畜文化、モンゴル研究の第一人者として知られる人間文化研究機構理事・小長谷(こながや)有紀先生の講演を聞いたのが始まりです。小長谷先生によると、乳(ミルク)には栄養ある食品という価値以外に「人類の歴史や学術的な知恵を伝える価値」があるというのです。それは「動物を殺さないまま食料として利用する人類史における『共生』の始まり」だというのです。

 家畜と共に暮らし、恵みを享受して、存在に感謝して喜び合う関係。いま見直され始めている持続可能なライフスタイルの原点は、モンゴルの遊牧民の暮らしにあると言えるかもしれません。毎日お乳をもらい、春には毛刈りをして衣類を作り、そうした長い付き合いの最終章に、ようやくお肉をいただきますという関係です。

 そもそも私たちの誰もが、生まれた時からお母さんの乳で育ってきました。人と乳の関係は切り離せません。食育で牛乳の栄養価を伝えることも大切ですが、こうした文化的な価値を知れば、ミルクの価値や受け止め方も変わってくるのではないでしょうか。

 そんな訳で、今回の旅は小長谷先生と、モンゴル科学技術大学人文学舎(歴史学・民族学教授)のルハグワスレン先生の案内で、チーズや乳製品関係者と参加してきます。総勢23人のツアーで四駆のオフロード車8台を借り切って毎日200~400キロを移動する大キャラバン隊です。大草原の星空や自然と遊牧民の生活を体験してきます。心配なのはキャンプでのトイレ問題なのですが~、いろんな初体験をすることになりそうです。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)