底面給水で水耕栽培 アジア展開へ、有機にも挑戦 グリーンウインド(名護市)


この記事を書いた人 琉球新報社

 沖縄美ら島財団子会社のグリーンウインド(名護市)が、台風や水不足が悩みの沖縄の環境に適した「底面給水式植物工場システム」を開発し、アジア展開を目指している。底面給水方式による水耕栽培は根っこごと収穫でき、冷蔵施設がなくても鮮度のいい野菜を流通させられることからインフラ整備が不十分な地域に適している。美ら島財団の研究成果の実用化を進める同社は、世界で初の水耕栽培下での有機無農薬栽培にも挑戦している。

 底面給水式の水耕栽培は、ウレタンなどの人工土壌に野菜の根を生やし、プランターの底面を培養液で浸して水や養液を吸い上げるシステム。根っこ全体を培養液の中で成長させる従来の養液循環方式に比べて水の使用量が少なく、ポンプの必要もないため生産コストの低減につながる。

「立体的栽培で単位生産量を高められる」とコンテナを利用した底面給水式植物工場の利点を語る花城良廣理事長=22日、本部町の沖縄美ら島財団

 植物が吸い上げた分を補充するだけのため、養液循環式のように窒素化合物などを含んだ養液を廃棄しなくてもよく、環境への影響も低減する。

 グリーンウインド社長を兼ねる沖縄美ら島財団の花城良廣理事長は「栽培棚を縦型に配置した省スペース化が可能で、単位面積当たりの生産量を高められる。水も土地も限られた沖縄の離島や太平洋の島々に向いている」と語る。

 沖縄美ら島財団の敷地内ではコンテナ型の植物工場を設置し、カラシナやレタスなど葉野菜を中心に栽培している。台風や日照不足など外部環境に影響を受けない密閉式で、雑菌の混入も防ぐ。発光ダイオード(LED)照明で栽培し、屋根に設置した太陽光パネルで電力を賄う。植物が蒸散する水分を除湿器で回収し、再び給水に使うリサイクルシステムも講じている。

 底面給水式植物工場は、国際協力機構(JICA)の中小企業海外展開支援事業に採択され、ベトナムでの案件化に向けた調査を進めている。JICAは「ベトナムでは生産から消費に至るフードバリューチェーン構築の遅れが課題になっている。根付き野菜を生産することで、常温で鮮度を維持しつつ長距離輸送や店舗販売を可能にする」と期待する。

 美ら島財団総合研究センターなどで現在取り組んでいるのが、植物と共生して根からの栄養吸収を助ける「菌根菌(きんこんきん)」を水耕栽培下でも定着させ、農薬と化学肥料を使わないオーガニック水耕栽培技術の確立だ。

 花城理事長は「水耕栽培の単一環境で、どこまで菌根菌の共生環境を人工的に作り出して成長を高められるか。実用化すれば世界初だ」と意義を語った。