琉球藍、自ら精製 今帰仁の酒井泉さん 栽培から一貫、来年工房開設も


この記事を書いた人 平良 正
琉球藍で染めたタペストリーを手に笑顔を見せる酒井泉さん。初収穫を目前に控える足元の藍草は青々と茂る=今帰仁村諸志

 【今帰仁】自然豊かな沖縄県今帰仁村諸志に住む酒井泉さん(27)が、琉球藍の原料となる藍草の栽培、色素成分を凝縮した藍玉(別名・泥藍)の精製、染め物作りまで一貫した取り組みに挑戦している。

 藍草は2015年に約10株から栽培を始め、今年11月に初収穫を迎える。琉球藍の魅力を伝えるため、将来は子ども向けの収穫や染めの体験なども構想しており、来年中の開設を目指し、工房の建築にも奮闘中だ。

 デザインに興味があった酒井さんは北山高校を卒業後、インテリアを学ぶために上京。その後は県内外の飲食店で働いた。15年4月に出身地の諸志に戻り、農家だった父の影響でなじみのあった農業とデザインの分野を両立できる琉球藍の世界に足を踏み入れた。

 藍草は名護市源河の大湿帯で栽培する知り合いから株を分けてもらった。少しずつ挿し木で増やし、今では650平方メートルほどの土地に青々と茂る。11月に初収穫し、20~30キロの藍玉を精製する予定だ。今後はタペストリーやクッションカバーなどを染め、販売する。

建築中の工房

 今年5月には、同じく藍染め産地として知られ、伝統染め織りが若者文化にも取り入れられているという台湾に10日間滞在し、藍玉の精製方法や藍染め作品の見せ方を学んだ。

 自宅横に建築中の約60平方メートルの工房は、アルバイトで資金を貯めながら少しずつ造っている。建物の半分は商品の展示や子ども向け体験イベントなどが開ける場所にする。

 4歳の娘・森ちゃんの母でもある酒井さん。「都市部には土に触ったことがない子どももいる。琉球藍の奥深さ、自然の大切さを次の世代にも知ってもらいたい」と故郷の自然への愛着は強い。「やんばるの恵みを多くの人に還元していきたい」と無邪気に笑った。