県が国保料試算 運営移管で28市町村が現行上回る


この記事を書いた人 大森 茂夫

 2018年4月から国民健康保険(国保)の財政運営が市町村から県に移管されることに伴い、県は30日、市町村国保の運用実績などを基に被保険者1人当たりの保険料を8万2102円と試算した。試算結果と15年度に被保険者に課された保険料の平均額を比較すると、28市町村(68・3%)で試算額が現行の保険料より上回ることが分かった。一方、県は各市町村から繰入金などが充てられることを前提に、来年4月の制度変更以降も「直ちに保険料を引き上げる必要はない」との認識を示した。

 試算は財政移管を前に、市町村が予算編成作業を進めるための目安として出されたが、県が出す標準保険料に近い額とみられる。標準保険料は12月の仮算定を経て、来年2月ごろに本算定が示される。その後、来年4月までに市町村が保険料の額を決定するため、現段階では実際の保険料が増額するのか、減額になるのかは不透明な状況となっている。

 県は今回の試算によって「新制度の1人当たりの保険料が実態に近い形で明らかになった」との見解を示しており、来年2月に示される標準保険料と大幅な違いはないとみている。

 今回の試算結果について、県は過去の医療費の伸び率などから、県全体で必要な医療費を約1578億円と試算。その上で、国からの公費などを差し引き、被保険者が支払うべき保険料を約360億円と算出した。県によると、現在の被保険者数は約43万8千人であることから、保険料の平均額は8万2102円となったとした。

 国保は市町村が運営しているが、医療費や所得水準などによって保険料に違いがある。さらに、一部市町村を除き県全体で200億円を超える赤字が生じ、各市町村は法定外繰入金や繰上充用金を流用して赤字を穴埋めしている。

 国保の収支を合わせるため、15年度に必要な1人当たりの保険料は県平均で10万7140円だったが、多くの市町村は法定外繰入金などを流用し、実際に被保険者に課された保険料の平均額は7万6797円だった。県は市町村から15年度に支払われた法定外繰入金などの同額を収入として想定し、制度変更によって1人当たり約2万5038円の余剰が生まれるとしている。

 一方、試算された保険料と、15年度に実際に課された保険料を比較すると、試算額は5305円高かった。市町村別で比べると、28市町村で試算額より高く、13市町村で低かった。県は現在の保険料を据え置くことを前提に、試算額が高くなった市町村に対して、財政移管による公費の拡充などによって「法定外繰入金の圧縮が可能となる」と説明している。