「三六協定」の監督強化 沖縄労働局、「労働者代表」見極めへ


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 沖縄労働局は、時間外労働(残業)をさせるのに必要な労使間の労使協定、いわゆる「三六(さぶろく)協定」について県内企業の締結実態の監督指導を強化する。協定届け出時に使用者と協定締結の相手方として法で規定されている「労働者の代表」が適正かどうか詳しく調べる。「代表」が過半数を代表しているかや民主的手法で選ばれたかを精査する。

 広告大手電通の従業員が過労死した違法残業事件を受け、全国的な流れの中で従前からのチェックを県内でもさらに強化する。

 三六協定は、使用者と「労働者の代表」の連名で届け出がなされる。「労働者の代表」とは、労働者の過半数で組織する労働組合か、組合がない場合は過半数を代表する者でなければならない。マネジャーや店長など監督・管理の地位にある従業員はなれない。民主的な方法で選出された者ではなく、使用者が恣意(しい)的に選んだ場合も無効になる。

 三六協定の届出書はこれまで、使用者と労働者の代表の名前が記載されているかや、協定記載の残業時間数が法定の延長時間の限度を超えていないかなど、主に形式上のポイントがチェックされてきた。

 今後は、協定に記載の「労働者の代表」が本当に過半数を代表しているか、民主的に選ばれているか、などについて具体的に聞き取りを行い、適切性を確かめていく。

 「労働者の代表」の適切性を巡っては、電通の違法残業事件で、電通の組合が「労働者の過半数で組織されておらず、無効だった」ことが明らかにされた。だが東京地検は、協定の書面が労働基準監督署に提出され、電通幹部が締結されていたと勘違いしたのもやむを得ないとし、協定は有効と判断した。これらの判断も踏まえ、内容の精査が必要と判断されたとみられる。

 県内の労基署に届け出された三六協定は2016年で前年比469件増の1万1798件あった。このほか申告などで情報を得た企業に調査に入った結果、三六協定が出されていない未届けの会社もあり、労基署は指導して届け出させている。(滝本匠)